【組織の病理】プロ野球に学ぶ「ダメ上司」の法則|デスクが見た、会社経営と現場を壊す昭和的マネジメントの正体

プロ野球が開催されるスタジアムのイメージ画像。プロ野球には社会の縮図が詰まっている
fourier1

プロ野球を見ていると、どこかで見たような職場の光景が思い浮かびませんか。


弱いチームの特徴として、リーダーの判断の悪さ、データを使いこなせないフロント、監督やコーチによるパワハラの横行、過去の成功にしがみつく姿勢、若手のモチベーションを下げる世代間のすれ違いなどが見られます。

自分の会社と同じ光景が毎試合、球場内で繰り広げられていることもあります。

閉じられた職場では、周りを客観的にみることはなかなか難しい。

プロ野球ファンの視点で応援するチームを見ると、監督、コーチと選手の関係、作戦や采配の良し悪し、試合展開を冷静に判断することができます。そして自分の職場と共通点があることに気づきます。

職場と照らし合わせ、問題点を洗い出し、強いチームからうまくいくヒントを得ることができるかもしれません。

弱くてもダメな指導者のもとで懸命にプレーする選手から励まされたりすることもあります。自分の姿と重ね合わせるからでしょうか。

たまに逆転勝ちすると幸せな気分になります。

上司や部下の関係、業績不振に悩む会社員や自営業者にとって、プロ野球の選手や監督は近くにいる分身です。

30年以上新聞社で記者やデスクをしてきた筆者が、プロ野球と職場の共通点を分析し、職場への効果的な活用法を伝授します。

🧭プロ野球は会社の縮図

多くの経営者は、権力を維持するためイエスマンを周囲に集めがちです。


有能な部下ほど恐れられて遠ざけられる。独裁になりがちで、パワハラ的な空気が蔓延。まじめな社員が離職し、組織はじわじわと衰退していく。

外から見ればわかることでも内側にいるとわからないものです。

プロ野球も監督やフロントの「俺のやり方」に固執し、選手やファンの声に耳を傾けない。監督の勘や思い込みの采配が続けばチームは崩壊していきます。

⚾昭和的マネジメントが残る球団の実態

セ・リーグのある球団では3年前、監督が「戦う顔をしていない」として実績ある正遊撃手を二軍に降格させ、最終的に他球団に放出しました。

思い込みで二刀流の選手を内野手、外野手、投手と目まぐるしくポジションを変更させた。バンドの苦手な選手にバンドをさせて予想通り失敗するのを何度も見た。

選手には、おなかがいっぱいになると動けないとして試合前に白飯を食べさせない。データや技術よりも根性や気力、精神論を何よりも重視。昭和のパワハラ指導が脈々と受け継がれてきました。

これではチームが一つにまとまらない。
選手への押し付け指導、ポジション変更の乱発、根性論重視――。
この球団は2024年まで3年連続最下位。新監督が代わった25年も方針を引き継ぎ、上位に大きく引き離されて4位でした。

2026年も5月21日現在、借金14の最下位に低迷しています。

主力選手にけがが多発し、データを無視し、監督の思い込みで選手を起用しているのが原因です。どこかの職場にも思い当たりそうです。

邪気をぬぐうためか開幕1か月で、監督やコーチはグラウンドやベンチに清めの塩をまいたり、盛ったりし始めました。スピリチュアルな世界に救いを求めました。

球団の観客動員数は過去最高

弱いのに球団の主催試合の観客動員数は過去最高の250万人超え。

スタンドには若い男女も多い。

「上から理不尽を押し付けられながらも、懸命に自分を貫く」――そんな姿にファンは自分自身を重ね、励まされているのかもしれません。

ファンの屈折した心理が監督や球団にこのやり方でいいんだと納得させてしまう。

サカナクションの山口一郎さんも今年、球団のアンバサダーになり、熱心に応援しています。なぜか。

メンタルの病と闘う山口さんは、体調がすぐれないときに「すべてが嫌になっても、〇〇ゴンズだけは嫌いにならなかった」と名古屋の民放番組で述べています。

山口さんは弱くても見捨てず応援する球団ファンがいることを知って、自分にも同じようなファンがいるかもしれないと思い、立ち直りにつながったそうです。

💼人間の弱さが組織を停滞させる

「ステレオタイプの思考」「権力欲」「保身」「不安」。繰り返される昭和の指導法やパワハラは、ある一定の人たちにノスタルジーを抱かせてしまいます。

特に競合の高校、大学で鍛えられた経験のある監督は、その傾向にあります。そこには指導者の人間的な弱さがあります。

親会社の事情もあります。
日本の球団は、新聞社の販売促進で設立された。
高尚な理念よりも“社業との関係”が重視され、経営には編集幹部や野球の非専門家が多い。「野球のプロ」が経営しているとは限らない。

球団強化よりも、取材やPRのため、財界とのつながりが優先される。
この構造が組織を縛り続けています。

新聞社の球団経営

私も球団を持つ2つの新聞社に勤務しました。

球団幹部の多くは編集局幹部。運動部出身の球団社長もいましたが、ほとんどはそれ以外。社会部出身者も多くいます。

編集局内で、幹部から私たちにどの監督がいいか聞かれることもありました。

二刀流のN選手

ドラフトも地元重視の時もありました。二刀流のN選手をくじで一位獲得した時は、編集局内は歓声が沸き、社員は大きな拍手で喜び合いました。

新聞社にとっては、人気球団を所有していることが重要であり、社のPR、地元財界との付き合いとしての役割が大きい。選手や監督だけでなく、球団の在り方にも問題が内在しています。

余談ですが、私が社会部デスクをしていたとき、高校野球特集のインタビューでN選手を取り上げました。彼は斜に構え、記事になりそうなことは話してくれず、頭を抱えた記憶があります。

選手も高校野球の強豪校にありがちな、特別感を持っている人もいます。

昨年、この球団本部長に元経済部長が就任しました。私が社会部にいたときに社会部遊軍キャップを務めていました。

着任後はチームを強くしようと奔走し、変わる気配を感じます。

球団経営にメスを入れ、外部からのコーチの招へい、フロント改革、マスコット、グッズ、動画配信、チアの活動、球場でのイベントも強化し、多くのファンを呼び込もうと必死です。

📉企業も球団も、同じ病を抱えている

プロ野球も企業も“現場指導者や上層部”に左右されるのは同じ。

どちらも声の大きい人の意見が通り、データや提案を無視する。正しい方向に努力する人ほど苦しむ。

球団を見れば、運営する親会社の経営体質も見えてきます。

🪞プロ野球から学ぶ「組織のリアル」

プロ野球の監督の動きや選手の姿勢は、私たちに多くの示唆を与えます。


監督の思考や行動パターンが分かれば、防げることもある。相手チームの監督の作戦に解決のヒントがあることも。私たちはゲームからそれを探っている。

理不尽な中でも自分を保ち、前に進む選手たち。
彼らからも勇気をもらっているのです。

まとめ:球場に映し出される「私たちの職場の肖像」

プロ野球観戦は、単なる娯楽ではありません。それは、巨大なスタジアムという鏡に映し出された「組織のリアル」を客観視するための格好の教材です。

強いチーム、そして強い組織を作るためのヒントを整理します。

  • 「俺のやり方」という独裁の罠を防ぐ  監督や経営者がイエスマンばかりを周囲に集め、データや現場の声を無視し始めたとき、組織の崩壊は始まります。客観的な数値よりも「勘や精神論」を優先していないか、常に警戒が必要です。
  • 「社業の都合」が現場の士気を奪っていないか  新聞社による球団経営の裏側にあるように、現場の強化よりも「PRや財界との付き合い」が優先される構造は、一般企業のプロジェクトでも起こり得ます。目的が「勝利(成果)」から逸れていないかを見極める力こそが、働く側の防衛策になります。
  • 理不尽の中でも「自分を貫く姿」に光を当てる  古い価値観やスピリチュアルな解決策に頼る上層部の下でも、マウンドや打席で懸命にプレーを続ける選手たちがいます。その姿に自分を重ね、励まされることは、過酷なビジネス現場でメンタルを保つための大きな救いとなります。

負けが込んでいる時ほど、組織の欠陥は露呈します。しかし、そこから目を逸らさず、フロント改革や新しい風(外部コーチの招聘など)を取り入れようとする動きに注目してください。プロ野球を「組織論の教科書」として眺めることで、あなたの職場をより良くするための具体的な一手が見えてくるはずです。

合わせて読みたい
【デスクが直伝】メディアに「選ばれる」情報の流し方|新聞・テレビが食いつく3つのポイントと採用率を上げる秘策
【デスクが直伝】メディアに「選ばれる」情報の流し方|新聞・テレビが食いつく3つのポイントと採用率を上げる秘策
合わせて読みたい
【特派員の実態はどうなの】円安で「花形部署」が崩壊? 憧れの海外赴任が“困窮生活”に変わった新聞社の残酷な現実
【特派員の実態はどうなの】円安で「花形部署」が崩壊? 憧れの海外赴任が“困窮生活”に変わった新聞社の残酷な現実
ABOUT ME
シュレディンガー
シュレディンガー
報道記者
主要マスコミに勤務。記者、デスクとして東京、大阪、地方での取材経験あり。最近はサイエンスコミュニケーター目指して宇宙物理や量子力学を学んでいる。
Recommend
こんな記事も読まれています!
記事URLをコピーしました