【絶望の現場で私を救った魔法の音楽】記者のメンタル管理|信楽高原鉄道事故からコロナ禍の孤独まで

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凄惨な事件現場、鳴り止まない罵声、そして組織内での孤独。新聞記者の日常は、時に精神の限界を試される「戦場」となります。

そんな過酷な日々の中で、私の心を折れさせず、再び前を向かせてくれたのは、カーステレオから流れる一筋のメロディーでした。

私が人生の岐路や困難な現場で、どのような音楽に救われ、どう気持ちを立て直してきたのか。仕事や生活に疲れを感じているすべての人へ、私の「心の処方箋」を共有します。

私が励まされた音楽を場面ごとに紹介します。皆さんもきっとあるはずです。

松任谷由美さんの「やさしさに包まれて」

1曲目は松任谷由美さんの「やさしさに包まれたなら」。

滋賀県信楽町で起きた40人以上が亡くなった信楽高原鉄道事故。

当時、駆け出しで大津支局勤務だった私は、毎日、大津市から数十キロ離れた信楽町の現場まで車で通いました。電車の前部同士が衝突で逆V字にせりあがった事故現場周辺で早朝から深夜まで取材に追われました。

その行き帰りの車中で、この曲を聞いていました。

連日、全国の報道各社が殺到し、上空をあわただしくヘリコプターが旋廻する異常な光景と被害者や遺族を取材する毎日は、過酷でした。

精神もやみかけ、難聴のような状態にまで追い詰められた。

現地の民家を借りた臨時支局では、本社からも応援記者が駆け付け、騒然とした雰囲気でした。現場近くに設けられた遺体の安置場所近くに行って遺族に話を聞くのが日課でした。私は取材が甘く、デスクから怒鳴られる毎日が続きました。

「静かな木漏れ陽のやさしさに包まれたなら きっと 目にうつるものすべてがメッセージ」というフレーズが心に刺さった。

この歌詞が、大津から信楽に向かう山道を通る時の風景が重なり、私を慰めてくれているように感じたことを思い出します。

「小さい頃は神さまがいて毎日愛を届けてくれた」「やさしい気持ちで目覚めた朝はおとなになっても奇跡は起こるよ」と歌われる部分を聞くと、現場の光景が消えていった。

救急車のサイレンが鳴り、次々と担架で人が運ばれていく鉄道事故の壮絶な現場の記憶を薄め、少しだけ穏やかな気持ちにさせてくれる。域と帰りに聞くことで、その間だけ、現実から逃げることができた。

カセットテープだった時代、松任谷さんのアルバムの中の曲として車中で聞いていました。アルバムの中の「海を見ていた午後」もソーダ水の中を船が横切る映像が目に浮かび、癒されました。

米米CLUBの「浪漫飛行」

2曲目は米米CLUBの「浪漫飛行」。

前の会社の入社2年目で、転職しようと思っていた時に聞いていた曲です。

デスクや先輩の殴る蹴るのパワハラ、過酷な労働、モラハラ、体調不良もあって限界を感じていました。

「苦しさの裏側にあることに眼を向けて 夢を見てよどんな時でも 全てはさこから始まるはずさ」「トランク一つだけで浪漫飛行へinto the sky  飛び回れこのmy  heart」

今の新聞社で茨城県の水戸支局勤務に赴任した時、同県北茨城市出身の米米CLUBリーダー石井竜也さんが、東日本大震災の被災地の地元小学校を何度も訪れ、子供たちを励ましている姿を見て再び勇気をもらいました。

スウィング・アウト・シスターズの「ブレイクアウト」

3曲目は英国のスウィング・アウト・シスターズの「ブレイクアウト」。

新聞記者、デスク、支局長などをやってきて、何か新しいことを始めたいと思うようになったときに聞いたのが、この曲。

「やっと殻を破るチャンスを見つけたんだから」「自分の歩む道を見つけて」「飛び出すのよ」。元気を出したいときは最高の曲です。

とにかくスタイリッシュなボーカル・コリーンとおしゃれなミュージックビデオが印象的です。

新聞からSNSの世界にチャレンジしてみたくなったときと重なります。ブログを始め、サイエンスコミュニケーターに挑戦し始めたころ。背中を押してくれました。

仕事に生活に人生に音楽は力を貸してくれる

ノラ・ジョーンズの「ドント・ノーホワイ」は新型コロナ感染が流行した時に聞いていました。

感染予防のため、人に会えず、不自由な生活を強いられた。

「きっと何かがあなたを変えてしまったのね」「あの時、私には、どうすればよかったのか分からなかったの」

当時、北陸地方の支局長だった私は、会社の感染予防の方針で支局員たちを支局に上げず、電話とズーム、メールでのみでやりとりした。

事務員の女性にも自宅勤務をお願いし、支局には私一人のみ。電話取りなどの雑用もしなければならず、孤独を感じていた。そんなとき、この美しいメロディーが心にしみました。

Creepy Nutsの「二度寝」は、タイムマシーンをテーマにしたドラマの主題歌。

「竜宮城や鬼ヶ島へ」「数十秒で月の裏へ」

宇宙物理学を学ぶ気持ちを盛り上げるために聞きました。

ヨアソビの「たぶん」、m-fioの「come again」は、物事は終わる。いいことは長くは続かない。ダメでもがっかりせずに前に進もうよと言うメッセージだと思って聞いています。

特にm-fioのリサさんが15年ぶりに復帰し、再ブレークしている姿に励まされます。頼もしい限り。

まとめ 音楽のない人生なんて

私にとって車中で流す音楽は、単なる娯楽ではなく、高ぶった感情をニュートラルに戻すための「心理的な儀式(コーピング)」でした。

悲痛な叫びが渦巻く現場から離れ、ハンドルを握り、あえて旋律に身を浸す。そうすることで、肥大化した感情を一度脇に置き、冷静な目を取り戻すことができたのです。

音楽によるこの「スイッチの切り替え」がなければ、私はおそらく、精神の均衡を保ちながらペンを握り続けることはできなかったでしょう。

深夜の山道、ヘッドライトが照らす暗闇の中で、何度も何度も巻き戻しては聞き返したユーミンや米米CLUB。あのカセットをガチャンと押し込む物理的な感触こそが、私にとって「戦場」へ向かうための覚悟のスイッチでもありました。

。私にとっての『浪漫飛行』が、茨城の被災地で見た石井竜也さんの姿と重なり、時を超えて勇気をくれたように、音楽は記憶の栞(しおり)となって、いつかあなたを救いにやってきます。

今、忙しい毎日の中で心が悲鳴を上げているのなら、自分だけの「救済プレイリスト」を作ってみてください。辛い時にそっと背中をさすってくれる曲、殻を破る勇気をくれる曲。ストレスフルな現代を生き抜くための最強の護身術です。

音楽がくれる力を味方につけて、明日もまた、一歩前へ踏み出していきましょう。

音楽のない人生なんて考えられない(No music, No life)

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シュレディンガー
シュレディンガー
報道記者
主要マスコミに勤務。記者、デスクとして東京、大阪、地方での取材経験あり。最近はサイエンスコミュニケーター目指して宇宙物理や量子力学を学んでいる。
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