合わない上司との付き合い方:パワハラ型・価値観の不一致型との向き合い方

fourier1

「合わない上司とどう接したらいいのか」。
新聞社で若い記者と話をしていると、よく相談されるテーマの一つです。

パワハラ型、モラハラ型、価値観の不一致――理由はさまざま。
それぞれのタイプに応じた対応策があります。
先日、聞きに行った人気プロデューサー・佐久間宣行さんの講演会でも、まさにこのテーマが語られていました。
彼の言葉に、私自身も強く共感しました。

パワハラ型:証拠を残し、冷静に動く

佐久間さんは、自身の経験をもとに「パワハラ型」と「価値観の不一致型」に分けて説明していました。

パワハラ型に対しては、記録を残すことが第一
暴言・高圧的な態度・理不尽な指示などは、録音やメモで克明に残し、担当部署に提出する。
佐久間さん自身、この方法で制作部から問題人物を排除した成功体験を語っていました。

感情的に対抗するよりも、客観的な証拠で動くことが最も効果的です。

価値観の不一致型:上司を“遠隔操作”する

一方で、価値観が合わないタイプの上司には別の対応が必要です。
佐久間さんは「上司の性格を徹底的に分析し、行動パターンを把握すれば扱いやすい」と語りました。

「こちらが上司を遠隔操作すればいい」

つまり、上司の判断基準やこだわりを理解し、あらかじめ先回りして行動するという考え方です。逆に佐久間さんは「同質の上司や同僚ばかりだと、異なる意見が入らないので面白い番組ができない」と危惧しました。

テレビ東京は以前、旅番組に力を入れていました。佐久間さんの上司はお笑い番組に理解がなく、佐久間さんを旅番組に異動させようとしました。佐久間さんは、お笑い番組の可能性や数字の伸び、イベントでの集客力など具体例を挙げて上司を説得しました。その後、上司はお笑い番組への見方が代わりました。


この発想は、私の実体験にも通じます。

北関東支局での経験:恐怖で支配する女性支局長

私が北関東の支局でデスクをしていたときのことです。
当時の支局長は典型的なパワハラ型で、価値観もまったく合いませんでした。

「人は恐怖を与えないと動かない」――それが口癖。
若い女性記者を個室に呼び出しては「あなたなんか辞めてしまいなさい」と叱責。
男性記者にも「〇〇部に飛ばそうか」と威圧的に言い放つことが日常でした。

支局の雰囲気は重く、緊張が絶えませんでした。
そこで私は、支局員たちと「この上司は明らかにおかしい」という認識を共有しました。

“共通の敵”を作ることで、支局の結束を強めたのです。

本社との連携と“バッファ”役の存在

私は本社幹部に、支局長の行動を逐一報告しました。
幸い、理解ある上司が多く、本社も支局の状況を確認に来てくれました。
結果として、支局と本社の距離が縮まり、連携が強化されました。

そんな中、もう一人のキーパーソンが現れました。
支局長の同期である女性記者・Nです。

テニスの王子様の追っかけ記者・Nの登場

Nは十数年ぶりに取材現場へ戻ってきた記者でした。
記事の執筆にも不慣れで、周囲との関係もぎこちない。
さらにミュージカル「テニスの王子様」の俳優の熱狂的ファンで、全国の公演を追いかけては写真集を買い集めていました。

性格はマイペース。担当の仕事の有無に関係なく休みを公演にあわせて要求してきました。帰ってくると、写真集を10冊買って、俳優と「ハグできた」とうれしそうに話すのを私たちは何度も聞かされました。

当然、他の支局員からはうとまれました。

そんなNを見て、私は「この人にできることはないか」と考えました。
そして、支局長の“話し相手”という役割をお願いしました。

Nは嫌がることなく引き受けてくれました。
休日に支局長とドライブに出かけたり、お茶に誘ったり。
そのおかげで、支局長のパワハラ的な言動は徐々に減っていきました。

不思議なことに、支局員たちのNへの評価も変わっていきました。
陰口が減り、チームとしての空気が良くなったのです。

嫌な上司も“使いよう”がある

支局長は感情を爆発させる前、必ずバッファローのように頭を左右に振る癖がありました。
それを合図に、周囲が先回りして対処することで、トラブルを防げるようになっていきました。

結果的に、支局は安定し、支局長の“外向きの怖さ”も他社との交渉で役立ちました。
嫌な上司も、見方を変えれば「組織の一員としての強み」を持っています。

パワハラ型でない限り、“合わない上司”にも活かし方がある。
それを見つけ出すのも、仕事の一つだと思います。

まとめ:合わない上司とどう向き合うか

  • パワハラ型:記録を取り、正式な対応をとる
  • 価値観の不一致型:相手を分析し、先回りで“遠隔操作”
  • 共通の敵や仲間づくり:職場の結束を高めるきっかけに
  • 嫌な上司も“使いよう”:長所を組織の力に変える視点を持つ

どんな上司でも、100%の悪人ではありません。
「どうすれば組織として前に進めるか」を考えることで、関係は必ず変わります。
その経験が、後輩を導く力にもなるはずです。

合わせて読みたい
自分に向いている仕事とは?〜好きなことが見つからない若者へのヒント〜
自分に向いている仕事とは?〜好きなことが見つからない若者へのヒント〜
ABOUT ME
シュレディンガー
シュレディンガー
報道記者
マスコミに勤務。記者として東京、大阪での取材経験あり。最近はサイエンスコミュニケーター目指して宇宙物理や量子力学を学んでいる。
記事URLをコピーしました