メンタルを壊す若手社員を救うために──上司ができること
若い社員がメンタルを壊す共通点
職場でメンタルを壊してしまう若い社員は少なくありません。
共通しているのは、理不尽な上司の存在、自己評価の低さや主張しない性格、まじめな気質です。体調を崩してうつ病になり、精神科に通うケースもあります。
そうならないためにも、彼らが声をあげられるようにする「考え方の方向転換」が必要です。上司や先輩は、どうしたらいいのか。
新聞社で30年以上勤務し、支局長や総括デスクだった私の経験から対処法をお伝えします。
自己否定に陥る彼女への声かけ
20代の女性記者Bのケースです。
彼女は地方支局でうつ病を発症しました。
長時間労働、先輩のパワハラ、相談に乗ってくれない上司、なじみのない土地──
さまざまな要因が重なりました。
制限勤務のまま、本社の私の部署に異動してきました。
話を聞くと、支局時代の上司や先輩の対応はひどいものでした。
「こんなこともできないのか」「やめちまえ」「あれもやって、これもやって」「記者に向いていない」「お前のせいでみんなが迷惑している」「俺たちのころは、もっと大変だった。今の記者はひ弱で困る」「何で飲み会に出ないのか」「新人は休みはあると思うな」
初任地のBは上司や先輩から、教えられることなく、できない要求を次々と要求されました。
それなのにBは「私が悪い」「未熟だから」「みんなに迷惑をかけている」「能力がない」と、自分を責めてばかり。上司に言われる前に、自分から“先回りして”謝っているようでした。
私は思わず言いました。「そんなことない」と。
一つひとつ事情を聞きながら、「あなたは悪くない」ということを丁寧に伝えていきました。否定的な出来事を、事実ベースでひっくり返す作業です。

「逃げてもいい」ことを伝える勇気
「取材力や感性はあるんだから、もっと自信を持ちなよ」と何度も伝えました。
嫌な場面ではその場を離れるなど“逃げ方”も教えました。
彼女には、生成AIの相談機能を見せて「ほら、AIも同じ意見だよ」と伝え、客観的に考えられるように工夫しました。
Bは次第に、職場の息苦しさや合わない人間関係を早めに伝えてくれるようになりました。それを配慮した職場の配置にしました。
ケアを続けるうちに、服装も明るくなり、表情にも自信が戻ってきました。
うつ病を発症した男性記者C
次に、Bの後に同じ地方支局に赴任した20代前半の男性記者C。
イケメンで誠実な性格でしたが、繊細で抱え込むタイプでした。
多方面から仕事を振られても断れず、休みも取れない。結果、彼も同じようにうつ病を発症しました。
Cは先輩や上司に言われると、おかしなことも受け入れてしまう。
支局の上司はCのうつ病を詐病だと思い込み、精神科のクリニックの診察に同席させろと言い出すありさま。
この上司は医師から強い抗議を受け、そんな職場にCを戻せないと復帰を拒み、ややこしくなりました。
断る勇気と環境改善の闘い
Cにも「断る勇気を持つこと」「間違っていないこと」を伝え、本社幹部にも状況を報告した。
局の上司が、Cに断りなく勤務記録の改ざんをしていたことも発覚しました。
最終的にCを支局から引き離すことで事態を収めました。
さらに本社に配属された新人女性社員Dのケース。
Dは、人間関係と上司のセクハラ発言が原因でうつ病を発症しました。
潔癖な性格もあり、上司の態度がどうしても許せなかった。
突然、出社できなくなった彼女から私に連絡があり、外で会って話をしました。
雑談が彼女を救った
「あなたは悪くない。仕事はそこだけじゃない」
本社以外の異動の選択肢を示しながら、今後の生き方を一緒に考えました。
話題は大学時代やお笑いの話にまで及び、彼女の表情も少しずつ柔らかくなりました。
労務部とも連携し、私は復帰までのDの橋渡し役を務めました。
Dは配属先が希望と違い、焦りがあったようですが、少しずつ前に進めるようになりました。最近、支局勤務になり、前向きに取り組んでいるようです。
上司としてできること──観察・理解・連携
上司としてできること。まずは「観察」です。
どんな性格で、何に悩んでいるのか。何をやりたいのか。
真剣に聞くことからすべてが始まります。
理解し、一緒に考え、関係部署と連携して調整する。
そして本人に社とのやり取りを伝えながら、焦らず見守ること。
模索しながらも、将来をサポートする。
それが、上司としての私たちの役割だと思います。

