なぜ組織の上層部は『無能』ばかりになるのか──逆淘汰の負のスパイラルと、AIがもたらす下克上の摂理

fourier1

「上司と合わない」「なぜ無能な人間が評価されるのか」

多くの人が職場で抱くこのフラストレーションは、組織が抱える「構造的な宿命」かもしれません。

30年以上の記者生活で、多くの企業、政党、団体の盛衰を間近に見てきた視点から、そうなる理由があると強く感じます。

組織の矛盾、働きすぎ、過度の競争、人材の流出が大きく関係しています。

嫌な上司を避けて起業するかフリーになるか、それとも困難を受け入れて会社や組織に残るか。いずれも覚悟が必要です。

日本の会社組織が直面している「負のスパイラル」の正体と、生成AIがもたらす下克上の予兆を分析します。

組織の劣化 上司は馬鹿ばかり

「上司は馬鹿ばかり。何度訴えても何も変わらないんです」

酒席で同僚の40代男性が漏らしたこの言葉。一見すると、どこの職場でもあるような「ボヤキ」に聞こえるかもしれません。

しかし、長年、組織の力学を取材してきた私の耳には、現代の日本企業が抱える「構造的な疲労」に対する悲痛な叫びのように響きました。

あちこちの職場で、きちんとした上司がいないという話を聞きます。

同僚の嘆きを起点に、なぜ現代の組織でこれほどまでに「上司との乖離」が起きるのか、そのメカニズムを紐解いてみたいと思います。

消去法で幹部になるのは

組織のピラミッドを登り詰めるのは、必ずしも「最も優秀な人」とは限りません。そこには中堅社員段階での残酷な「淘汰のメカニズム」が働いています。

部下思いの誠実な中堅社員は、上層部の無理な要求と現場の不満の板挟みになり、精神をすり減らして戦線を離脱していく。

卓越した能力を持つ中堅社員は、難易度の高いプロジェクトを任され、大きな失敗を背負わされたりして失脚してしまう。

あるいは自らの可能性を信じて起業やフリーランスへと新天地を求めていきます。

結局、最後に主要ポストに残るのは、自らリスクを取らず、変化も起こさず、ただ波風を立てずに組織に留まり続けた「消去法の結果としての幹部」であるケースが少なくありません。

優秀な人ほど倒れ、器用な人ほど去り、結果として『何もしなかった人』が組織を司るという逆転現象は、現代の組織が抱える深刻な病理と言えます。

従順な社員を主要ポストに

会社では、トップの意向が色濃く反映されます。

同族会社に限らず、あらゆる古い組織でこの現象は起きています。

彼らは幹部が力を持つのをひどく恐れ、従順な社員を主要ポストに登用したがる。

自分に意見をする幹部は、自分を蹴落とそうとしていると恐怖すら感じる。

トップにとって社員や経営のことは二の次なのである。

その結果、冒頭の後輩のような気持になってしまう。

負のスパイラル

問題がある職場でも管理職に勇気と発言力があれば、解決に向かうかもしれません。

管理職がトップにおもんぱかって状況を上に伝えなければ、問題はくすぶり続けます。

体や心を壊してしまう社員が増え、カバーする社員も負担がかかり、さらに人が減ってしまう。それを繰り返すと、どんどん人がやめていく。

残りの社員に負担が押し寄せ、間違いやトラブルを招く。負のスパイラルに陥っても手を打とうとしない。それが現実です。

変化への対応が遅い

オールドメディアほど管理職の変化への対応が遅い。人が減れば、生成AIやデジタル化を進めないとやっていけないのに、それすらためらっている。

過去の成功体験から、変わらないことが美学のようだ。

世の中は、生成AIの出現で、仕事の在り方が激変しつつあるのに。

これまで、ベテランの『経験』という参入障壁に守られてきた管理職ですが、生成AIの登場により、その優位性は一瞬で崩れ去ります。

ITを使いこなす若者が上司を凌駕する『立場の逆転』は、すでに始まっています。

判断や意思決定は、AIを駆使する若者の方が的確のように思います。

古い価値観で動いているベテラン上司は、若い世代からは違和感だらけ。

昭和の美学と令和の合理性がぶつかる時

変化への対応が遅れているのは、ビジネスの世界だけではありません。

例えば、最近のお笑い界で話題となった、若手実力派芸人とベテラン芸人による「審査基準」をめぐる論争も、この世代間の感性の衝突を象徴しているように見えます。

昭和の価値観やこれまでの成功体験に基づいた「手法」を重んじるベテランに対し、現代の視聴者感覚や緻密な論理、スピード感を武器にする若手。

彼らの衝突は単なる意地の張り合いではなく、「旧来の権威が通用しなくなった時代の変化」が表面化したものだと言えるでしょう。

変化を拒み、過去の成功に固執する姿が、若い世代の目には「アップデートを止めた老害」として映ってしまう。お笑い界に限った話ではなく、あらゆる組織で起きている「スキルの陳腐化」と「感性の逆転」の現れです。

生成AIの登場によって、このスピードはさらに加速しています。

かつての「熟練の技」がデジタル技術で瞬時に再現される今、ベテランに求められているのは、教えを説くことではなく、自らをアップデートし続ける勇気なのかもしれません。

それを社の管理職が理解する日は来るのでしょうか。

まとめ 次の新しい扉

大手メディアでも問題は内部に潜みます。

時代に遅れ、アップデートしない上司が増殖してしまうのは必然なのかもしれない。そんな企業は時代とともにいずれ退場となるだろう。

宇宙も生成と消滅を繰り返し、国家も興亡を繰り返す。

会社も次々と新しく生まれていく。古い会社の劣化は自然の摂理と考えれば腹も立たない。生き延びる企業は、それに気づき、手を打つ企業。あなたの会社は、どうでしょうか。

合わせて読みたい
「パワハラ型リーダー」に罪悪感はない。サントリー会長辞任の裏にある「新聞記者が知る」組織の病理
「パワハラ型リーダー」に罪悪感はない。サントリー会長辞任の裏にある「新聞記者が知る」組織の病理
合わせて読みたい
【処世術】元気なあいさつは損をする? 元デスクが教える「扱いやすい奴」にならないための絶妙な距離感と武器としての活用術
【処世術】元気なあいさつは損をする? 元デスクが教える「扱いやすい奴」にならないための絶妙な距離感と武器としての活用術
ABOUT ME
シュレディンガー
シュレディンガー
報道記者
主要マスコミに勤務。記者、デスクとして東京、大阪、地方での取材経験あり。最近はサイエンスコミュニケーター目指して宇宙物理や量子力学を学んでいる。
Recommend
こんな記事も読まれています!
記事URLをコピーしました