記者が伝授する「質問力」の極意|真実を暴き、相手の心を動かす3つの技術

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「いい質問」には、大きく分けて3つの効果があります。

  1. 真実を明らかにする
  2. 相手の人間性や、隠れたエピソードを引き出す
  3. 深い信頼を得て、関係性を強固にする

しかし、これらを引き出すには事前の準備と戦略が欠かせません。質問力を身につけることは、取材の現場だけでなく、ビジネスや日常生活において最強の武器となります。記者の視点から、その具体的な方法を紐解いていきましょう。

【効果1】真実を明らかにする:矛盾をあぶり出す記者の視点

記者会見などの公の場では、質問こそが真実を照らす光となります。説明に一貫性があるか、矛盾がないかを問い正すことで、真偽を判断する材料が得られるのです。

例えば、米の価格が高騰した際、農林水産大臣が対策として打ち出した「おこめ券」の配布。記者やコメンテーターがその矛盾点を次々と指摘したことで、膨大な事務経費、人件費、特定業者への利益誘導の疑いなどが浮き彫りになりました。

また、静岡県伊東市の前市長による学歴詐称疑惑では、記者たちが大学を直接取材した事実を突きつけたことで、本人が除籍されていた事実を認めざるを得ない状況を作りました。

私の記者経験でも、事件取材で、捜査関係者に取材で得た情報をぶつけて、捜査の進展具合や立件の可能性を探っていました。多くは見立て通りになりました。

何も情報を持たずに「何かありませんか?」と聞くだけでは、実のある情報は得られません。鋭い根拠のある質問をぶつけてこそ、真実に一歩近づけるのです。

【効果2】面白いエピソードを掘り起こす:オセロ誕生秘話に学ぶ

相手のユニークな人生観や人間性を引き出すには、相手の経歴を徹底的に調べ、「人とは違う取り組み」に着目することが重要です。

私がオセロの創始者、長谷川五郎さんを取材した際もそうでした。 オセロは戦後、茨城県水戸市の旧制中学で、男子生徒が碁石で遊び始めたことから誕生しました。当時は碁石をひっくり返すのが手間だったため、長谷川さんは牛乳瓶のふたを集め、片面に黒い紙を貼って手作りの駒を作ったそうです。

商品名の「オセロ」は、英文学者だった長谷川さんのお父様が命名。シェイクスピア劇の黒人と白人のドラマを盤上に見立てたという、文学的な背景もありました。

「劣勢でも一気にひっくり返せる。こんな波乱に満ちたゲームはない」と語る長谷川さんの言葉は、戦後復興を遂げた日本の姿とも重なって見えました。

【効果3】信頼を得て関係を深める:相手に寄り添う「共感の問い」

最も大切なのは、質問を通じて「私はあなたを理解しようとしている」というメッセージを伝えることです。

以前、戦中に日本へ連れてこられ、戦後は同胞のためにタクシー会社を設立した在日韓国人の男性を取材しました。

差別や困難に立ち向かってきた彼の人生を真摯に受け止め、質問を重ねることで、深い信頼関係を築くことができました。

その後も付き合いをさせていただき、別の取材にも協力していただきました。

また、ボランティアで清掃活動を続ける大手商社の副社長を取材した際、一ツ橋大や東大大卒が幅を利かせる中、副社長は地方の無名国立大学卒からのし上がったことや原作を読んでから映画を見て英語を習得したことなどを話してくれました。

学歴社会を実力で駆け上がった半生に共感し、その姿勢を問うことで、取材後も長く続く良好な関係を築くことができました。

【まとめ】質問は、一瞬の油断も許されない「真剣勝負」

いい質問は、真実を明かし、魅力を引き出し、絆を深めます。 日常の会話でも、的を射た質問を投げかければ、相手に「この人は信頼できる」という緊張感と好印象を与えます。

逆に、ピントのずれた質問は相手を失望させ、チャンスを逃すことにもなりかねません。何を問い、どう答えてもらうか。質問とは、自分と相手との間に流れる、一瞬の真剣勝負なのです。

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シュレディンガー
シュレディンガー
報道記者
主要マスコミに勤務。記者、デスクとして東京、大阪、地方での取材経験あり。最近はサイエンスコミュニケーター目指して宇宙物理や量子力学を学んでいる。
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