社外秘の社内冊子が廃刊に至った理由|他社批判とスキャンダルの行方

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社外秘の冊子とは何だったのか

会社内だけで月に一度発行されていた「社外秘の冊子」がありました。地方における他社の動きや政治経済についてまとめるという名目でしたが、実際の内容は他社の悪口や地方議員のスキャンダルなどが中心でした。支局の記者や支局長が、本社の編集担当者に情報を送っていたのです。

他社批判やスキャンダルが中心の内容

冊子には「○○社の記者は支局長とそりが合わず、精神的に病んでしまった」「○○議員と○○議員は不倫関係にある」「○○社の記者は市長に嫌われている」「○○社の記者は懇親会で大失態をした」「○○記者は確認不足で誤報を書いて大恥をかいた」などといった記述が並んでいました。他社の人事情報まで詳細に掲載されることもありました。

ネタ集めに追われる記者たちの苦悩

記者たちは毎号、こうしたネタを集めなければならず、上司からの催促もあり大きな負担になっていました。他社の記者や市の広報関係者にお願いして、何とか記事を埋めることもあったそうです。この慣習は少なくとも数十年は続いていました。同僚からは「時間の無駄」「くだらないからやめるべきだ」との声が上がり、私自身も上司に訴えましたが、状況は変わりませんでした。役員たちが冊子を楽しみにしており、やめられなかったのです。

他社記者からの抗議と冊子の終焉

ところがある日、他社の記者から「自分のことが掲載されている」と強い抗議を受けました。冊子のコピーが外部に漏れ、その記者の手に渡っていたのです。内容は彼の個人的なプライベートに関わるものであり、それが私の会社内で閲覧されていたことに激しく怒りました。彼は「お前の社の記者のまずいところもばらすぞ」と社に乗り込んでくる事態になりました。

この事件をきっかけに、長年続いた冊子はついに廃刊となりました。

まとめ

社内限定の「社外秘の冊子」は、もともと地方情報の共有を目的として始まったはずでした。しかし、実際には他社批判やスキャンダル記事が中心となり、記者たちの大きな負担や精神的なストレスの原因にもなっていました。役員が楽しみにしているという理由で長年続いてきましたが、外部への漏洩と他社記者からの抗議を受けて、ついに終焉を迎えることになったのです。

この出来事は「慣習だから」「上層部が望むから」という理由で続けられてきた社内文化が、外からの一撃によってあっけなく崩れることを示しています。組織においては、時に“やめられないこと”を見直す勇気が必要だと痛感させられます。

まとめ

月イチ発行の「社外秘の冊子」は、役員のちょっとした“週刊誌ごっこ”だったのかもしれません。現場の記者にとっては面倒でストレスの種でしたが、上層部にとってはコーヒータイムのお供。そんな“裏の社内報”も、外に漏れた瞬間にただの火種と化し、あっさり廃刊に追い込まれました。

結局のところ、長年続いてきた慣習も「楽しみにしている人がいるから」という理由だけでは生き残れないということです。情報管理をおろそかにしたら、ブーメランのように自分に返ってくる。まさに“身内だけの内輪ネタ”は、外に出た瞬間、ブラックジョークに変わってしまうのでした。

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シュレディンガー
シュレディンガー
報道記者
マスコミに勤務。記者として東京、大阪での取材経験あり。最近はサイエンスコミュニケーター目指して宇宙物理や量子力学を学んでいる。
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