高校野球報道の現状と課題|記者が見た取材現場の変化

かつて日本の夏を彩ってきた高校野球の報道。しかし近年、その規模は確実に縮小しています。新聞やテレビの部数減少、視聴率低迷、経費削減の影響で、現場の記者体制は大きく変化しました。
記者として10回以上甲子園取材を経験した私が、取材現場の裏側と、今後の高校野球報道が直面する課題について語ります。
甲子園取材の思い出と記者の役割
私は社会部からデスクとして春夏合わせて10回以上甲子園に派遣されました。球場近くに臨時支局を構え、全国から集まる若手記者たちの原稿をチェック。全国ニュース向けの記事や、地元選手の活躍・スタンドの様子を地方ニュースに送りました。
本社勤務とは違い、他地域の記者や写真部員と協力しながら進める仕事は新鮮で、夜は食事を共にすることもありました。
試合後に去っていく記者たち
試合では担当校の記者が中心となり、他の記者が応援に入ります。しかし担当校が敗退すると、記者は地元に戻らざるを得ません。後半になると記者不足に悩まされ、何度も各支局長に滞在延長をお願いしたこともあります。
さらに統一地方選や総選挙と重なる年は、私も含めて記者が選挙取材と甲子園デスク業務を同時進行でこなすこともありました。
高校野球報道はなぜ縮小しているのか
新聞の発行部数やテレビ視聴率の低下により、各社は人員や経費を削減しています。地方大会から紙面が縮小され、甲子園デスクや臨時支局も数年前に廃止されました。
経費の問題だけでなく、高校野球そのものの社会的立ち位置も変わりつつあります。
高校野球の課題
今夏、広島の広陵高校で部員への暴力問題が発覚しました。名門野球部の上下関係や監督との関係性が問われる事態に。酷暑の中で選手をプレーさせる安全性や、朝日・毎日新聞の主催による大会運営の意義も議論されています。
会場運営、人材確保、経費負担など、これまで表に出なかった課題が顕在化しています。
SNS時代の高校野球報道
かつて高校野球はマスコミと高野連にとって都合の良い存在でした。しかしSNSの台頭により、不祥事や運営上の問題が隠しきれなくなっています。
これからは旧来型の一方的な報道でなく、多様な視点からの情報発信が求められるでしょう。
まとめ
高校野球は依然として多くの人に愛されるスポーツですが、その報道スタイルや取材体制は大きな転換期を迎えています。現場を経験した立場から見ても、今後は透明性や安全性を重視した形で大会と報道の在り方を見直す必要があります。