職場で異文化理解を怠るリスク|マスコミの宗教トラブル事例と危機管理の教訓

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職場で文化や宗教を軽視すると何が起きるのか

グローバル化が進む現代の職場では、他国の文化や宗教をおろそかにすることが大きなリスクにつながります。知らずに軽視してしまうと、会社全体に抗議が押し寄せたり、国際問題に発展する可能性すらあります。私自身、新聞社で勤務していたときにその危機を体験しました。

宗教的配慮を欠いた記事掲載で抗議が殺到

東京社会部に所属していたとき、中東を代表する宗教を揶揄する記事を掲載したフランスの雑誌社が過激派に襲撃され、多くの死傷者が出るという事件が起きました。
私の勤務する新聞社は、その事件を報じる際に雑誌社が掲載した風刺漫画を紙面に2回も載せてしまいました。この宗教では絵や像で表現することは偶像崇拝につながるとして禁じているため、極めて配慮を欠いた判断でした。掲載のゴーサインを出したのは外報部のデスクや整理部員たち。掲載をどうするかの議論はなかったようです。他の新聞やテレビは掲載や放映をほとんど見送っていました。

海外文化や宗教理解を欠いた危機

掲載後すぐに、日本在住のパキスタン人団体から強い抗議が寄せられました。数十人が本社前に集まり「なぜ偶像を掲載したのか」と声を上げ続けました。会社は緊迫した雰囲気に包まれ、不要不急の社員は出社禁止となるほどでした。


社会部のデスクであった私は出社せざるを得ず、窓の外には抗議の人々、周囲には警官の警備…。仕事に集中できないどころか、身の危険を感じた瞬間でした。社から気をつけてといわれたが、どうしたらいいかわからない。警視庁担当記者から「何かあったら警官がすぐに突っ込める態勢にあるから大丈夫」と説明を受けたが、気持ちは落ち着かなかったです。

最終的には社の幹部が団体と協議し、謝罪文を紙面に掲載することで収束しました。もし対応を誤れば、国内問題だけでなく国際問題に発展していたかもしれません。危機管理の重要性を身をもって実感しました。

グローバル化時代に求められる職場の危機管理

この経験から学んだことは、

  • 文化や宗教を軽視した判断は、企業全体を危険にさらす
  • 国際的な事案に関わるときは、専門家や経験者の意見を必ず取り入れる
  • 「知らなかった」では済まされない。日頃から異文化理解を深める努力が必要

という点です。

特にメディアは国内だけでなく海外の読者も視野に入れる必要があります。ネット社会では一瞬で情報が世界に拡散するため、より慎重な判断が求められます。

まとめ|職場の文化理解はリスク管理そのもの

異文化理解を怠ると、職場は予想外の危機に直面します。もし会社に危険が及ぶような状況になれば、今の時代ならリモートワークや一時退避という選択肢もあります。大切なのは「危険を予測し、文化や宗教を尊重する姿勢」を持つことです。これこそが現代の職場に欠かせないリスク管理の第一歩です。

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シュレディンガー
シュレディンガー
報道記者
マスコミに勤務。記者として東京、大阪での取材経験あり。最近はサイエンスコミュニケーター目指して宇宙物理や量子力学を学んでいる。
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