指名手配犯が常連客に愛された夜――福井駅前おでん店での福田容疑者逮捕の真相

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福井で人気者だった福田容疑者

指名手配中だった福田〇子容疑者(当時)が、時効直前に福井市で逮捕されたニュースは大きく報じられました。驚くべきことに、彼女は別人として地元で暮らし、福井駅近くのおでん店に頻繁に出入り。明るく気さくな性格で場を盛り上げる常連客として人気を集めていたのです。逮捕の報道に、店の常連客たちは「まさか」と口を揃えて驚きました。


逮捕のきっかけはテレビ番組

福井県警を担当していた頃、一報を受け現場へ駆けつけました。福井駅裏の場末という言葉がぴったりの場所に店はありました。逮捕のきっかけは意外なものでした。おでん店にいた男性客が、未解決事件を扱うテレビ番組を視聴中に「犯人とされる女性の声が、常連客の福田さんにそっくりだ」と気付いたのです。

その男性は警察に通報すると同時に、福田容疑者が手にしていたビール瓶を提供。指紋が一致し、本人と特定されました。後日、福田容疑者が再び店を訪れた際、警察に逮捕されたのです。


逃亡生活の拠点と素顔

彼女の拠点は福井駅裏のビジネスホテルでした。家宅捜索に入った際、部屋にはフェンディなどブランドの服が並び、華やかな生活ぶりがうかがえました。夜はおでん店で常連客に積極的に話しかけ、カラオケを披露。元ホステスらしく、場を盛り上げるのが得意で、多くの人が彼女目当てに通っていたといいます。

逮捕翌日には、特急列車で警察署に護送。取材陣にもみくちゃにされ転倒する姿が全国に放映され、さらに大きな話題となりました。


常連客の反応と店の結末

逮捕後、意外な反応がありました。「なんで○○ちゃんを警察に売ったんだ」と憤る常連客の声です。彼女を慕っていた人々にとって、その不在は大きな寂しさにつながりました。

結果的に批判や中傷が広まり、老夫婦が営んでいたおでん店は閉店に追い込まれることになります。福田容疑者がどれほど“人たらし”だったのかを物語っています。


サスペンス劇場のような逃亡劇

振り返れば、彼女は生き延びるために別人として暮らさざるを得ませんでした。その存在は地元の人々の生活に深く入り込み、やがて衝撃の逮捕劇を生み出しました。その展開はまるでサスペンス劇場のワンシーンのよう。

いまでもこの事件は「昭和・平成の事件簿」として語り継がれています。逃亡者が“人気者”になったという事実は、人間模様の不思議さを感じさせます。

人間の表と裏、見知らぬ場所での暮らし、別人と偽った人生、そこで親しくなった地元の人たち。偶然、正体がばれて時効直前の逮捕と別れ。ドラマの題材になるのもうなづけます。

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シュレディンガー
シュレディンガー
報道記者
マスコミに勤務。記者として東京、大阪での取材経験あり。最近はサイエンスコミュニケーター目指して宇宙物理や量子力学を学んでいる。
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