地方選挙のリアル|候補者取材から見えた現場の裏事情

「地方選挙に立候補してみませんか?」——そう聞かれて心が動く人は少なくありません。
しかし、候補者になると、地元メディアや記者との関わりは避けられません。
本記事では、地方選挙を長年取材してきた記者の視点から、候補者対応の現実や取材の危険性、そして多様化する地方政治の現状をお伝えします。
立候補を検討している方も、選挙の裏側を知りたい方も必読です。
顔写真入り経歴記事はこうして作られる
地方選挙の報道では、候補者の顔写真と経歴をまとめた記事が定番です。
その裏側では、記者が候補者カードを配布・回収し、インタビューや写真撮影を行っています。
現職議員には議会開催日に直接配布、新人候補には事務所や自宅まで訪問。効率化のため、複数のメディアが協力して作業することもあります。
こうして集めた情報をもとに、テレビや新聞でおなじみの経歴記事が完成します。
取材拒否の候補者と対応の難しさ
多くの候補者は取材に応じますが、中には取材や経歴カードの記入を拒否する人もいます。
その場合、紙面や放送での扱いは小さくなったり、顔写真を空欄にしたり、場合によっては紹介記事自体を掲載しないこともあります。
遠方在住で、事実上取材が難しい候補者も存在し、記者にとっては大きな負担です。
無投票回避と“常連候補者”の存在
選挙戦が成立するためには、法定得票数を得る必要があります。立候補するには、それなりの責任が伴うということです。票が取れない候補者は供託金を没収されます。
無投票回避を狙い、全国の首長選にほぼ毎回立候補する“常連候補者”も存在します。
別の県に住み、選挙活動は行わないため、記者は住居地まで足を運んで取材することになります。本人はいろいろと出馬理由を説明しますが、本心は分かりません。ポスター代水増しの疑惑などもささやかれたりしています。
こうした人物が現れるかどうかは、選挙担当記者の間でも常に話題になります。
経歴表記の工夫とルール
候補者の経歴は、紙面や画面に収まるよう6文字以内で表記する必要があります。
「スーパーメディアクリエーター」のような長い肩書きは「動画編集業」へ、
「ヒーラー」のような分かりにくい職業は「癒し業」といった形に短縮。
地方プロレス団体のレスラーの場合、マスク姿とリングネームを掲載するかが議論となり、社会的認知があるとして掲載が許可された例もあります。
選挙取材に潜むリスク
近年、選挙取材はよりリスクを伴うようになっています。
記者が候補者に取材している様子を無断で動画撮影しSNSで拡散、名刺情報をネットに晒すなどの事例も発生。
報道の公平性や正確性を保つため、記者は従来以上に神経を使っています。
候補者同士の激しいぶつかり合い、中傷合戦も問題になっています。立候補すること自体が危険にさらされるのは断じてあってはいけません。
セカンドキャリアとしての地方政治
かつて地方議会は、行政経験者や団体役員出身者が中心でした。
しかし最近では、カラオケ店主、元地下アイドル、コスプレイヤー、ヨガ講師など多彩な経歴の市民が立候補しています。
定年退職者や転職者が第二の人生として地方政治に挑戦するケースも増え、市民参加が進んでいます。
私の元上司も70歳で出身自治体の市議に当選しました。自治会活動もしていたので、転身先としては、合っていたのかもしれません。
まとめ:市民参加が地方を変える
地方選挙は候補者にとっても記者にとっても多くの準備と調整が必要な場です。
立候補を考える方は、こうした現場の現実を知っておくことで、よりスムーズに活動を始められるでしょう。
いろいろな市民の考えを反映されるのが議会です。転職先としての政治、これまで会社員として培ってきた経験をセカンドキャリアとして生かす場としての政治。さまざまな人がかかわることは、よりよい地域をつくるのに必要なのかもしれません。
