選挙速報の裏側:記者が双眼鏡で「バードウォッチング」する理由。選管より早く当確を出す「極秘術」

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衆院選、参院選、知事選、市長選、町村長選や各自治体の議員選の開票所では、どんな選挙速報の裏側があるのかご存じでしょうか?

各地の開票所(体育館や講堂)では、報道各社による「1票をめぐる静かな戦争」が繰り広げられています。

記者が双眼鏡を手に、さながら野鳥を観察するように投票用紙の束を数える通称**「バードウォッチング」。公式発表前に数字を掴む「裏票(うらひょう)取材」**を展開しています。

30年の記者人生で何度も修羅場をくぐった私が、一般の人でも実践できる(かもしれない)、メディアより先に結果を知るための「開票速報の舞台裏」を公開します。

■ 記者は2人1組。双眼鏡で「山」を数える

自治体の開票速報は、選挙管理委員会(選管)が定時に発表しますが、実はこれ、新聞や放送の締め切りに間に合わないことが多々あります。そこで記者は、選管の発表を待たず、独自に「票を読み」ます。

準備は、選管から「開票所の配置図」を取り寄せることから始まります。そして以下のことを用意したり確認したりします。

  • 双眼鏡(8〜10倍)や望遠レンズ
  • 一束の票数(通常500票、自治体により100票の場合も)の事前確認
  • 2人1組の体制(1人がのぞき、1人が記録)

開票所では、計数機を通った投票用紙が輪ゴムで綴じられ、候補者名が書かれた「集積台」に積み上げられていく。

その「束の数」を数え、残票数を計算することで、公式発表より何十分も早く、事実上の勝敗を見極めるのです。

接戦区では現場の「目」が最後を決める

当日は開票時間より前に到着し、どの投票箱がどの台で開かれるかをチェック。

計数機を通った投票用紙は、輪ゴムで綴じられ集積台へ。

この「束の数」から票数を算出し、ライバルとの差、そして残票数を計算して独自に「当確」を判断します。

新聞社には過去のデータや残票から自動で当選圏内を算出する「当選判定支援ツール」もありますが、接戦区では現場の「目」が最後を決めます。

午後8時以降、各投票所から投票箱が続々と運ばれてくる。期日前の箱がどこで開かれるのかもチャックしておく。

どの投票所の箱をどの開披台で空けるかは決まっています。各候補者の地盤の投票所がどの開披台で開かれるかわかっていると便利。

記者は1人が双眼鏡で見る役、もう1人が記録と時間計測の係です。

集積台に載せられた束の数を数え、票数を算出していく。候補者名を書いた紙を机から垂らしたり案内板を立てたりする自治体が多いが、ない場合は、双眼鏡で候補者名をのぞき込んで判別します。

集積台の山積みの結果から独自判断で当確を打つことができます。

■ 正確性がすべて。「誤報」が生んだ前代未聞の珍事

しかし、早さを競うあまり正確性を欠けば、取り返しのつかない事態になります。

数年前の滋賀県草津市議選では、公式発表を前に市の秘書課職員が開票所で独自集計を誤り、終了前に参政党の新人を「当選」と判断。

この連絡を受けた市長が即座に参政党新人の事務所にお祝いに駆けつけましたが、後に落選が判明し、市長が再度「お詫び」に訪れるという珍事が起きました。

集積台の参政党新人のところに別の候補者の票が混ざっていたことが原因でしたが、選挙結果は「正確性」が何より優先されるべきことを物語るエピソードです。

この影響で、選管は数え直すことになり、結了時間が大幅に遅れました。

最終盤の攻防。選管職員への「裏取り」と判定ツール

「当選判定支援ツール」は、選管が発表する各候補者の得票を入力すると残票数を自動で計算し、数字の上で絶対的に当選圏内の候補のみ当確を出していきます。

しかし、十分な差がついていない中でも当確を判断しなければいけない場合は、疑問票や無効票などが何票あるのか、選管職員にこっそり教えてもらいます。

そのうえで、残票を計算し、当落線上の候補者について、山積みの結果に残票数を足すなどして当選者を判断していきます。

首長選なら副首長や議長、議員選なら首長といった選挙結果が早く入る人に当たるのもあり。

■ 国政選挙でも欠かせない「現場の目」

国政選挙では大規模な世論調査や出口調査が主役ですが、接戦区ではやはり「バードウォッチング」が最後の決め手になります。

特に比例代表は選管の公式発表が遅いため、開票所に派遣された記者が、集積台に置かれた比例代表の政党別得票の束を双眼鏡で読み、スマートフォンで本社に送信しています。

選管からの中間発表がなく最終発表の1回のみの自治体があるため、政党議席数を少しでも早く確定させるために行っています。

新聞の締め切りに間に合わない場合は号外を出したりしています。

近年は、ウェブで投票結果を速報しています。ウェブでの閲覧数は、年々増えていく傾向にあります。

■ まとめ:あなたも開票所へ行ってみませんか?

開票所は、誰でも参観できる(立ち入り制限エリア外から)公的な場所です。

  • 場所取りの技術
  • 双眼鏡の性能
  • 作業フローの理解

これらさえあれば、あなたも記者に混じって「票読み」を体験できます。自分が投じた一票が、どのように集計され、山となっていくのか。そのプロセスを目の当たりにすれば、政治や自分の街への関心は、今までとは全く違うものになるはずです。

今度の選挙、双眼鏡を片手に「地元の体育館」へ出向いてみてはいかがでしょうか。

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報道記者
主要マスコミに勤務。記者、デスクとして東京、大阪、地方での取材経験あり。最近はサイエンスコミュニケーター目指して宇宙物理や量子力学を学んでいる。
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