自分に向いている仕事とは?〜好きなことが見つからない若者へのヒント〜
「自分はこの仕事に向いているのだろうか」「本当に好きなことがわからない」。就職したのに、なぜか満たされない。そんな思いを抱えたまま働いている人は多いのではないでしょうか。
私自身も編集の現場で、同じような悩みを抱える若者に出会うことがあります。そんな折、人気テレビプロデューサー・佐久間宣行さんの講演会を聞きに行き、印象に残った言葉がありました。
「どんな仕事でも、自分なりの面白さを見つける」
講演会は、地元の青年会議所主催で、働く人の悩みに答えていくスタイル。
佐久間さんは講演で、「どんな仕事でも、自分なりに面白いことを見つけることから始めたらいい」と語りました。
彼は大学時代、広告研究会に所属し、映画監督や劇作家を志す才能ある仲間たちに圧倒されたといいます。自分には才能がないと感じ、落ち込んでいた時期もあったという。授業も出席せずに映画館や劇場に通い、毎日を過ごしました。
それでも就職活動ではテレビ業界を志望。最初に事務職で受けたフジテレビでは映画や演劇知識の豊富さから面接官から「君は制作に向いている」と助言され、テレビ東京を受け直して番組制作の道に進みました。
入社後は地味で辛い仕事も多かったそうですが、台本のコピーを取るだけの作業にも一工夫を加え、関連資料を添えてスタッフに渡すなど、自分なりの工夫を重ねました。
その姿勢が評価され、やがてお笑い番組の制作を任されるようになったといいます。
「好きなことが見つからない」悩みへのヒント
講演の中で佐久間さんは、若者から寄せられた「好きなことが見つからない」という質問に、こう答えました。
「面白いことを探していくうちに、やりたいことが見えてくると思う」
私も最近、同じような相談を受けました。20代半ばの男性社員が「記者や整理の仕事を経験してきたが、やりたいことがわからない」と打ち明けました。
IT業界への転職を考えているが、面接まで行った教育関連や予約システムの仕事にはあまり興味がわかなった。
話を掘り下げていくと、医療関係の仕事に興味を持っていることがわかりました。子供のころ大好きだった祖母を病気で亡くした時の記憶が強烈に残っているという。何か医療に携わりたいという気持ちがどこかにあったようです。
医療分野の記事や説明書を作るライター職の求人を見つけ、「この仕事を受けてみたい」と話す彼の表情は、急に明るくなりました。
誰にでも、心の奥に眠っている“関心の種”があるのかもしれません。自分で気づいたり、人に指摘されたりと、きっかけはさまざまかもしれません。
「好き」は、人や体験の中で育っていく
別の例として、彼の同僚だった元男性記者の話があります。
彼は新聞社を辞め、吉本興業の養成学校に入学しました。彼のように、まったく異なる分野へ飛び込む勇気も一つの生き方です。
旧帝大理学部数理学科出身で数学の教員免許を持つ彼が、なぜお笑いの道へ?と驚きましたが、実は昔からお笑いが好きだったそうです。
“お笑い”に挑んだ元新聞記者
記者時代はお笑い好きの資質は、内に秘めたままでした。もしダメだったら、教員になる道を残して決断しました。
ただ、私には数学とお笑いはどうしても結びつかない。そのキャップはどうなのだろうか。そのとき佐久間さんの講演を思い出しました。
ミルクボーイの漫才 自分の“取っ手”を探すこと
佐久間さんは講演で、「世に広まるには“取っ手”が必要」と語りました。
ミルクボーイの漫才を例に、「『俺』の話を『俺のおかん』に変えたことで一気に受けるようになった」と紹介。少しの工夫が大きなブレイクにつながることを示していました。
ミルクボーイは最初は「俺が思うには」と自分でぼけていたが受けなかった。途中で「俺のおかん」に変えたら、おかんならありそうだと客が笑うようになった。その2年後にМ1チャンピオンになりました。
佐久間さんは、どこか変わっている人、時代からずれている人が好きだという。「彼らをプロデュースして面白いことを世に広めること、彼らが育っていくことが何よりうれしい」と力説しました。
おそらくこの元記者も、自分ならではの“取っ手”を見つければ、きっと成功するでしょう。佐久間さんならどうプロデュースするのでしょうか。
喜劇研究会に少しだけ所属
私も大学時代、喜劇研究会に少しだけ所属しました。
漫才や落語に真摯に取り組む先輩たちを見て、あんなに明るくしゃべれないし、活舌も悪いと気付きました。何より、人前で大声で話すのが恥ずかしかったのですぐにあきらめました。
ただ、お笑いはずっと見てました。
その経験から新聞記者出身のお笑い芸人は見たことがありません。弁護士やアナウンサーはいますが、記者は新鮮さはあるように思います。
オールドメディアを自虐ネタにしたらうけるのでしょうか。やっぱり私には、いい案が浮かびません。
やりたいことは「考える」より「見つけていく」もの
人は、何かに夢中になっているとき、自然と表情が変わります。
医療の話をしていた社員のように、好きなことに触れた瞬間に目が輝くのです。
やりたいことは、頭で考えて見つけるものではなく、
行動しながら、少しずつ見えてくるもの なのかもしれません。
その小さな「面白い」が、未来の仕事につながっていくのだと思います。

