【記者の健康管理】不規則な勤務でも「睡眠」を死守する知恵|限界を突破するための仮眠とメンタルケア
「忙しくて寝る時間がない」――。
そう嘆くビジネスパーソンは多いはずです。しかし、分単位の決断を迫られる新聞記者の世界では、睡眠不足は「判断ミス」という致命的なリスクに直結します。
事件現場の車中から本社の仮眠室まで、過酷な現場を渡り歩いてきた記者が実践する「細切れ睡眠術」や「メンタル管理」の工夫を紹介します。あらゆる職種に応用できる、休息を確保するための戦略とは。忙しい毎日の中で「どうすれば睡眠を確保できるのか?」と悩む人は多いのではないでしょうか。
眠くなったら仕事を中断して仮眠する。机の上でも構わない。隙間時間に漫画喫茶やネット喫茶、会社の仮眠室などに駆け込みよく寝てました。一見、不謹慎に思えるかもしれませんが、これは短時間で脳をリフレッシュさせ、次の取材に備えるためのサバイバル術でもありました。
この記事では、実際の記者たちの働き方を踏まえつつ、「忙しい中でも睡眠を確保するための工夫」を紹介します。
■ 若手記者はとにかく呼び出される
20代の若手記者は、事件・事故・災害が発生すれば真っ先に現場へ向かいます。
深夜であってもカメラを抱え、取材を続け、翌日まで帰れないことも珍しくありません。支局勤務では泊まりや夜勤も多く、落ち着いて寝る時間が確保しづらいのが実情です。
そんな中で彼らが頼るのが「車での仮眠」。自分だけの閉ざされた空間で音楽をかけ、短時間でも休息を取ります。ただし、まさに眠ろうとしたタイミングで呼び出しの電話が鳴ることも少なくありません。
■ 記者クラブやソファーが“ベッド代わり”に
県警や県庁の記者クラブにはソファーがあり、新人記者たちはそこで仮眠を取ることがよくあります。机の上でもクッションをうまく使えば仮眠は可能です。
限られた空間の中でも、眠れる場所はすべて活用するのが記者の習性です。
■ 社会部の泊まり勤務は過酷
本社の社会部では、泊まり当直があり、記者2人1組でデスクの隣に座りながら補助作業を進めます。現場への急行や電話取材などで深夜まで慌ただしく働き、朝刊が降版する午前3時過ぎにようやく休憩に入れます。
社内の仮眠室はカプセルホテルのような二段ベッドですが、隣で寝ている記者のいびきや、深夜に鳴る連絡電話で落ち着いて眠れないことも多いものです。午前5時には夕刊準備が始まり、さらに午後2時まで業務が続きます。
業務終了後は再び仮眠室や漫画喫茶、ネット喫茶に出かけて睡眠を補い、持ち場へ戻るという生活が続きます。
■ 昼夜逆転のデスク勤務
デスク記者は朝刊・夕刊の進行を繰り返すため、昼夜逆転した生活になります。慣れないうちは体内リズムが崩れ、強いストレスを感じます。実際、食事量が増える、集中力が落ちるといった影響が出ることもあり、休みの日に睡眠をまとめて取るなどの工夫で調整する必要があります。

■ 若手記者のメンタルケアは不可欠
過酷な環境の中では、睡眠不足が続き、うつ状態になる若手記者もいます。
不眠や心身の不調が悪化しないよう、周囲が早めに気づき、相談しやすい環境を整えることが重要です。
眠くないのに無理に寝ようとすると、うまくいかないことがありました。その時は、やり残した仕事に取り組みます。不思議と次第に疲れ、眠くなる。そのまま横になります。仕事も睡眠も無駄なくできることが多い。
記者の経験則から導き出した知見です。
「眠れないときに無理に寝ない」という実体験は、睡眠医学的にも理に適った知恵(睡眠制限法に近い考え方)です。
■ 睡眠は「質」「量」ともに大切
人生の多くの時間は睡眠にあてられています。
睡眠は心身のバランスを整え、集中力や判断力の維持に欠かせません。仕事の質を保つためにも、どれだけ忙しい状況でも睡眠を軽視しないことが大切です。
若い記者でも眠れずに心身の不調を訴えることは少なくない。事件や事故、重要な取材の前後は緊張と興奮でなかなか寝付きにくいもの。
音楽やゲーム、お笑いなどを見たり聞いたりして、興奮を鎮める努力をすると効果があることが多いです。いつもこれを見たり、聞いたりしたら必ず眠くなるという定番を持っていると、コントロールしやすいかもしれません。自分に合った方法を探してみてください。
客観的に自分を見られるようになると、体調管理もうまくなります。記者にとって健康で働けることが何よりです。
新聞記者のように不規則で過酷な環境であっても、工夫次第で睡眠時間は確保できます。ただし、深刻な不調を感じる場合は、専門医への相談が不可欠です。
「不規則な現代人」へのアドバイス・エール
■ 記者の知恵を、あなたの「戦場」にも活かすために
ここまで新聞記者の過酷な睡眠事情をお話ししてきましたが、これは決して特殊な世界だけの話ではありません。 24時間稼働する社会を支えるシフト勤務の方々、深夜の緊急対応に備えるエンジニア、そして何より、3時間おきの授乳や夜泣きと戦いながら、文字通り「24時間営業」で子育てに励むお父さん、お母さん。
私たちが取材現場で必死に睡眠を確保してきた知恵は、現代の「戦場」で生きる皆さんにも、きっと応用できるはずです。
1. 「完璧な8時間」を諦める勇気
まとまった睡眠が取れない自分を責めないでください。記者が車中で取る15分の仮眠が驚くほど脳を癒やすように、細切れでも「脳を休める時間」を確保できている自分を肯定してあげましょう。
2. 自分のための「入眠ルーティン」を持つ
緊張状態が続く生活の中では、スイッチを切るのが難しくなります。私が音楽やお笑いで興奮を鎮めたように、皆さんも「これをすれば脳がオフになる」という自分だけの儀式を大切にしてください。それは、コーヒーの香りを嗅ぐことでも、お気に入りの手触りのタオルに触れることでも構いません。
3. 体調管理は「セルフ・コンパッション(自分への慈しみ)」から
「仕事だから、親だから、寝ていられない」と無理を重ねるのが一番の危機です。記者が「正確さ」を保つために寝るように、あなたがあなたの大切な役割を果たすためにも、休息は「権利」ではなく「義務」であると考えてください。
不規則な生活は、心身に大きな負荷をかけます。だからこそ、客観的に自分の疲れを認め、休める隙間を見つけたときには、「全力で休む」。そのタフな姿勢こそが、忙しい現代を生き抜くための最強のスキルになると、私は信じています。



