地元紙 vs 全国紙の裏側 すべて筒抜けだった|地方赴任で直面する“異文化”の圧力と監視社会
「そんなことがあるのか」
赴任先で、仕事の習慣や感覚がまったく違っていたら、どうすべきでしょうか。
地域によっては東京や大阪の価値観とは大きく異なることがあります。
都会で通用した仕事のやり方が、そのまま地方では通じない。ときに、とんでもない仕打ちを受けることもあります。
そうならないためには、その土地の人を観察し、話に耳を傾け、自分の「これが正しい」という思い込みを一度置く必要があります。
ここでは、私が30代後半で記者・デスクとして赴任した地方都市での体験をお伝えします。
地方都市への異動と不思議な偶然
地方都市で私は、遊軍記者や県庁所在地の市政キャップも担当しました。
赴任前、同僚からは「地元紙が強いから苦労するぞ」と忠告されていました。
着任後、私は街の中心近くのマンションに部屋を借りたのですが、ほどなく地元紙の記者が私の部屋の2階上に引っ越してきました。
元・地元紙の記者から理由を聞いて驚きました。
「あなたの行動を監視するためです」
違和感を覚えざるを得ませんでした。

地元紙に存在した「報告書」
地元紙には、私の会社に特化した「報告書」が存在した。
毎朝、地元紙の記者が幹部に、私の社の記者たちの行動を幹部に細かく報告していたのです。
私が市政を担当していた時期、私が市役所の課長に取材すると、すぐ地元紙に情報が伝わりました。
課長が地元紙に私か来たことを通報していたのです。
結果、記事はいつも同着。
ある日、私だけが夕刊で先に記事を出したところ、地元紙は夕刊に間に合いませんでした。
すると地元紙の記者は、課長の自宅に怒鳴り込みました。
「なぜ取材に応じた!」
翌日、課長は肩を落として私に言いました。
「もう、私の課には取材に来ないでほしい」
泣きそうな顔が忘れられません。
飲み会での“分断”ルール
記者クラブの電話は盗聴されているのではないかと疑うほど、取材内容が筒抜けになることがありました。
電話会社に盗聴の有無を調べてもらったこともあります。
疑いが晴れなかったので、やり取りはすべて携帯電話に切り替えました。
市長だけは私に懇意にしてくれ、時々こっそり話をしてくれましたが、それでも常に“監視されている感覚”がありました。
地元紙には奇妙なルールがありました。
- 他紙の記者と飲み会で同席禁止
- 商工会や団体の懇親会には、社への出席許可が必要
まるで秘密結社です。
全国紙の記者とは仲良くなりましたが、彼らも口をそろえて言いました。
「ここでの取材は、本当に息苦しいよな」
地元紙の“特ダネ”と驚きの価値観
ある日、地元紙に驚く記事が載りました。
老舗風俗店の閉店を、写真入りで第二社会面トップ扱い。
常連客の“惜しむコメント”まで掲載。
子供も読む一般紙でここまでやるのかと衝撃を受けました。
他紙は誰も後追いしませんでした。
前任者が語らなかった理由
この地方での取材経験を終えて本社に戻った記者たちは、前任地のことをほとんど語りません。
私が話を振っても、皆一様に口が重かった。
その沈黙こそが、この土地での記者生活の大変さを物語っているようでした。
地方で学んだこと
なかなか珍しいケースだそうですが、地方によっては独特の取材習慣が存在します。マスコミも地元警察や自治体、政治家とべったりの会社もあります。
互いに持ちつもたれてで成長し、生き残ってきました。
このつながりは、その歴史が長いほど強固です。外から来たマスコミには、なかなか入り込むすきはありません。
時代が止まっているようにも見えます。その土地にとっては、それが
あっていたのかもしません。
私の会社の上司に「この土地で私たちの新聞を出す意味があるのか」と尋ねたことがありました。上司は「地元紙とは違う見方を県民に示す使命が私たちにはある」と語気を強めて教えてくれました。
ここでの経験を通して痛感しました。
地方は、自分たちの価値観で動いていない。
土地ごとに独自の文化や商習慣があり、それを理解しなければ何も進まない。
この地方での経験は、社会を生きる上でかけがえのない学びとなりました。

