常連か新規客か?新幹線駅誕生で地方商店街はどちらを優遇すべきか|「おもてなし」の落とし穴
鉄道の新駅開業により観光地としての発展が期待される地方都市。
常連客も通う駅前商店街では、どんな戦略で外からの客を迎え入れたらいいのでしょうか。
観光客を優先するか、継続してきてくれるなじみ客を大切にするのか。両方とも取り込むことはできるのか。
一部の店主は、新幹線がやってくれば観光客やビジネス客は、ほっといても来てくれると思い込んでいたようです。
SNSの時代、その姿勢では逆のメッセージを県外にも発信しかねない。
不親切な店と感じた利用客は、悪口や抗議を飲食評価サイトに投稿するかもしれない。それを見た市外の観光客らは、その店を避ける行動をとるでしょう。
噂は地元にも伝わり、地元のなじみ客まで失いかねない。
成功するか、取り残されるかは、店主の「おもてなし」の心にかかっている。具体例を見ながら考えていきましょう。
新幹線開業で盛り上がる地方都市
私が北陸の地方都市に勤務していたころ。
新幹線駅の開業を控え、街は歓迎ムード一色に包まれていた。 駅前商店街や観光協会は「おもてなし」を合言葉に、新たに見込まれる観光客やビジネス客を想定した研修を繰り返していた。
人口減や産業衰退で元気を失っていた地元商店街にとって、新幹線は起死回生のチャンスだった。

「売り切れ」と言われた刺身定食
新駅開業直前の昼時、私は駅前商店街の老舗料理店に入った。
ホワイトボードに大きく書かれていた「刺身定食」を迷わず注文した。
すぐに女将から「もう終わってしまった」と告げられた。仕方なくとんかつ定食を頼むことにした。
常連には特別対応
その直後、なじみの男性客2人が店に入ってきた。
先ほどの女将は笑顔で2人に接し、「今日いい魚が入ってるよ。刺身定食はどう?」と勧めた。
さっき「売り切れ」と言ったばかりなのに。私の隣に座った彼ら2人のテーブルには刺身定食が運ばれてきた。 色鮮やかな刺身の盛り合わせは、まぶしく映った。
あからさまな常連客優遇です。私は、こけそうになりました。
常連を大切にする店の心理
女将にとって私は、一度きりの観光客に見えたのでしょう。 常連を優先する方が売上の安定につながると考えたようです。
商売の基本は「新規客をリピーターに」
売上を伸ばすためには、 転勤族や観光客にも「この店はいい」と思わせることが大切なのに。気に入れば、彼らは同僚や知人を連れて再訪することもあります。
常連客だけでは数が限られています。
県外客らが書き込むネットや口コミの店の評判はあっという間に広がります。地方都市もネット社会からきり離すことはできない。
新規客を軽視すれば、新駅の波及効果を逃してしまいます。
駅前ロータリーでの驚きの出来事
駅前ロータリーでの出来事にも驚かされました。
ロータリーは、新駅開業のため再整備されたばかり。
駅利用の同乗者を下すために乗用車が一時停車していました。
その後ろから大型路線バスが来て、大きいクラクションを長時間鳴らして「どけ」と言わんばかりに威嚇した。
乗用車ははずみで動いてしまい、危うく降りようとした同乗者が事故に巻き込まれるところでした。

「おもてなし」とは誰のためか
地方都市が発展するには、新しい客を街のファンに変えていく――それが地域の未来をつくるのだと思います。そのための本当の「おもてなしの心」が必要です。
常連客を残念な気持ちにさせるのはよくありませんが、要はバランスです。
安全でない都市には、だれも再訪しようとは思いません。
この地域には1940年代に「命のビザ」を携えたユダヤ人難民が上陸した日本で唯一の港があります。
上陸した難民を市民は、温かく手を差し伸べ、迎い入れました。食べ物を与え、難民が所有していた時計や貴金属を駅前の時計店が換金してあげた記録も残っています。この話は、今もユダヤ人社会に語り継がれています。
イスラエルやアメリカ、ポーランドからユダヤ系の要人がこの街を訪れ、今も感謝の気持ちを市長らに伝えています。
「おもてなしの心」は、時空を超えて引き継がれる。
地元住民は、誰でも迎い入れる素地を持っています。



