科学と平和の共存は可能か| アインシュタインがフロイトに送った往復書簡から読み解く

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科学技術の進歩によって、現代にいたるまで多くの兵器がつくられ、世界で殺戮が繰り返されています。果たして、科学は人類に幸福をもたらしているのか。それとも破壊へと導いているのか。純粋に知を追及してきた科学者たちも政治や戦争に利用され、頭を悩ませてきた。その一人で、最も偉大な物理学者のアインシュタインは、平和のために心理学者フロイトへ助けを求めました。20世紀を代表する2人の科学者の知恵から戦争をなくすためにすべきことを考えます。

ひとはなぜ戦争をするのか

アインシュタインとフロイトが交わした公開の往復書簡のテーマは「ひとはなぜ戦争をするのか」。

きっかけは1932年に国際連盟からアインシュタインに依頼されました。今の文明で最も大切だと考える事柄を取り上げ、一番交換したい相手と書簡を交わしてくださいとの指示だった。相手に選んだのは、人の心の専門家のフロイトでした。

当時、アインシュタインは53歳、フロイトは76歳。

ともにユダヤ人で、ナチスドイツが勢力を拡大しつつある中、アインシュタインはアメリカ、フロイトはイギリスへ亡命を余儀なくされました。2人は迫害される側としての共感があったのでしょう。

アインシュタインは、手紙の中で「私自身は物理学者ですので、人間の感情や人間の想いの深みをのぞくことにはたけておりません。人間の衝動に関する深い知識で、問題に新たな光をあてていただきたいと考えております」と依頼しました。

宇宙は扱えても人の心は数式のようにはいかなかったようです。

憎悪と破壊という心の病

アインシュタインは平和に抵抗する人間の悪しき2つの傾向として権力欲と、権力にすり寄って利益を得ようとするグループの存在を挙げます。

これに大勢の国民が従ってしまう理由について、「人間には憎悪にかられ、相手を絶滅させようとする欲求が潜んでいる」と結論付けました。戦争は人間の攻撃的な本姓ゆえにけっしてなくならないと断じました。

これを前提にフロイトに「憎悪と破壊という心の病に侵されないようにすることはできるのか」と問いかけました。

フロイトは人間の本能的な欲求「破壊活動」という概念を用いて解き明かしていきます。

そのうえで人間の間に「感情の絆」をつくりだすものは戦争防止に役立つと説きます。もう一つは「文化の力」としました。

特許庁で数々の革命的な研究結果

アインシュタインの学生時代を振り返ってみましょう。

ドイツの厳格な高校になじめず兵役を逃れるために退学。高校資格のいらない名門スイス連邦工科大学チューリッヒ校を受験しました。総合点は不足していましたが、物理と数学は最高得点だったため入学を条件付きで許されました。入学後も興味のない科目はまったく学ばず、教室では優秀さよりも「わめいてうなること、なれなれしさ、轟きわたる笑い声」で知られていました。

教授に推薦をもらえなかったアインシュタインは友人の父親の紹介て特許庁で働くことになります。ここで数々の革命的な研究結果を挙げました。

不遇な学生時代やナチスに追われた辛い体験が、アインシュタインを物理学だけでなく政治や平和への強い関心を向かせたのかもしれません。

この特許庁時代”に発表したのが、

  • 光量子仮説
  • 特殊相対性理論
  • 質量とエネルギーの等価(E=mc²)
    といった20世紀を変える理論でした。
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まとめ

アインシュタインの迷い「人間としての葛藤」がありました。

科学とは、公式や数式の世界だけでなく、
孤独・信念・時代・運命が絡み合う「人の物語」でもあります。

私たちが科学を学ぶことは、
結局のところ「人間とは何か」を知ろうとすることなのかもしれません。

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シュレディンガー
シュレディンガー
報道記者
マスコミに勤務。記者として東京、大阪での取材経験あり。最近はサイエンスコミュニケーター目指して宇宙物理や量子力学を学んでいる。
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