リーマン物語⓺
fourier1
リーマン物語
今の職場でだめならシャッフルするのもいいかもしれない。仕事のフィールドを広げてみよう。そう思っていると、別の会社で働かないかとの誘いを受けた。いろいろ考えた末にお世話になることにした。これまでの経験が十分生かせる分野だ。経営陣は多方面から入っており、絶対的なオーナーがいない。雰囲気は今とは大きく異なりそうだ。系列のネットワークもしっかりしている。希望を見出せるようになってきた。楽しんでやりたい。エンターテイメント性も学びたい。
そんな折、今の職場を振り返ってみた。7月の参院選当日、投票締め切り直前の編集会議では、自公が大敗の出口調査が明かされた。外国人排斥を支持するような参政党の大躍進が見込まれていた。石破首相の退陣も取りざたされた。調査だけ見ると、歴史が変わる転換点になる可能性が大きかった。それでも編集幹部はデスクたちを前に「この調査に高揚感は全くない。いつもどおり間違いのないよう淡々とやってくれ。それだけだ」と指示を出した。
SNSが新たな武器になり、選挙が新しいフェーズに突入していることは明らか。記者経験者なら国が変わる予感を感じるはず。幹部にはそれがない。同時期に新入社員たちが研修で私たちのいる部にも回ってきた。彼らはなんで、この業界を選び、この会社に来たのだろう。聞いてみたくなった。でも、ぐっとこらえてやめた。