選挙速報の裏側:記者が双眼鏡で「バードウォッチング」する理由。選管より早く当確を出す「極秘術」とは?
衆院選、参院選、知事選、市長選、町村長選の開票所で、どんな戦いが繰り広げられているのかご存じでしょうか?
開票所の多くは体育館や講堂など広いスペースで行われます。報道各社が記者席を陣取り、開票速報を競って伝えようとしています。
開票所に詰めている記者たちは、双眼鏡で「バードウオッチング」さながら集積台に積み上げられた投票用紙の束を数え、選挙管理委員会の職員に合図を送ってもらったりと、あらゆる手段を駆使しています。
間違いは許されないので、早さの一方、正確さは欠かせません。
開票所での記者たちがどうやって選挙速報をしているのかをしれば、一般の人たちも自ら出向いて真似してみるのも面白いかもしれません。メディアよりも先に選挙結果を知ることができるかもしれません。
開票所で繰り広げられている速報をめぐる記者たちのドラマを紹介します。
締め切りとの戦い。選管より早く動く記者たちの「野鳥観察」
知事選や市長選など自治体の選挙では、選挙管理委員会(選管)が定時に「開票速報(中間発表)」を行いますが、実はこれ、新聞や放送の締め切りには間に合わないことがしばしばあります。
そこで行われるのが、集積台に積み上げられた投票用紙の束を数える**「バードウォッチング」や、選管・広報課職員から公式発表前に数字を掴む「裏票(うらひょう)取材」**です。
選管から開票所の配置図を取り寄せ
バードウオッチの準備としては、選管から開票所の配置図を取り寄せます。
その地図を基に開票作業の流れ、読み取り分類機の有無、一束の票数、集積台の置き方、集積台に候補者名が分るもの、開披台(投票箱を開いて投票用紙を広げる台)や集積台が見える場所、報道席の有無、2階席の有無と立ち入りの可否などを確認します。
用意するのは、双眼鏡(8から10倍程度)、クリップボード、記入用紙、脚立など。双眼鏡の替わりにカメラの望遠レンズでも可。
実践:2人1組で「票の山」を読み解く
当日は開票時間より前に到着し、どの投票箱がどの台で開かれるかをチェック。
記者は2人1組で、1人が双眼鏡でのぞき、もう1人が記録と時間を計測します。
計数機を通った投票用紙は、輪ゴムで綴じられ集積台へ。
この「束の数」から票数を算出し、ライバルとの差、そして残票数を計算して独自に「当確」を判断します。
新聞社には自動で当選圏内を算出する「当選判定支援ツール」もありますが、接戦区では現場の「目」が最後を決めます。当日は、開票時間より前に到着して準備。
午後8時以降、各投票所から投票箱が続々と運ばれてくる。期日前の箱がどこで開かれるのかをチャックしておく。
どの投票所の箱をどの開披台で空けるかは決まっています。各候補者の地盤の投票所がどの開披台で開かれるかわかっていると便利です。

集積台の山積みの結果から独自判断で当確を撃つ
記者は2人1組で行う。1人が双眼鏡で見る役、もう1人が記録と時間計測の係です。
計数機を通った投票用紙は、輪ゴムで綴じられて机に載せられていく。綴じる票数は自治体ごとに異なるが、1束500票のことが多い。必ず事前に選管に聞いておく。
それを踏まえて集積台に載せられた束の数を数え、票数を算出していく。候補者名を書いた紙を机から垂らしたり案内板を立てたりする自治体が多い。ない場合は、双眼鏡で候補者名をのぞき込んで判別します。
集積台の山積みの結果から独自判断で当確を撃つことができます。
当選判定支援ツール
集積台の山積みでは、十分な差がついていない中でも当確を判断しなければいけない場合、疑問票や無効票などが何票あるのか、選管職員にこっそり教えてもらいます。
首長選なら副首長や議長、議員選なら首長といった選挙結果が早く入る人に当たるのもあり。
そのうえで、残票を計算し、当落線上の候補者について、山積みの結果に残票数を足すなどして当選者を判断していきます。
このほか、新聞社には「当選判定支援ツール」があります。
選管が発表する各候補者の得票を入力すると残票数を自動で計算し、数字の上で絶対的に当選圏内の候補のみ当確を出していく。
「誤った当確」が招いた市長のお詫び行脚
しかし、早さを競うあまり正確性を欠けば、取り返しのつかない事態になります。
数年前の滋賀県草津市議選では、市の秘書課の職員が開票所で独自集計を誤り、終了前に参政党の新人を「当選」と判断。
これを受けた市長が即座に事務所にお祝いに駆けつけましたが、後に落選が判明し、市長が再度「お詫び」に訪れるという珍事が起きました。
別の候補者の票が混ざっていたことが原因でしたが、選挙結果は「正確性」が何より優先されるべきことを物語るエピソードです。
この影響で、選管は数え直しをすることになり、結了時間が大幅に遅れました。
号外やウェブ速報に力
新聞の締め切りに間に合わない場合は号外を出したりしていました。近年は、ウェブで投票結果を速報しています。
国政選挙では、開票所に派遣された記者が、集積台に置かれた比例代表の政党別得票の束を双眼鏡で読み、スマートフォンで本社に送信しています。比例代表は選管からの中間発表がなく最終発表の1回のみの自治体があるため、政党議席数を少しでも早く確定させるために行っています。
国政選挙では、大規模な世論調査や出口調査を基に当落判定に使っていますが、設定る選挙区ではやはり、バードウォッチングが欠かせません。
まとめ:あなたも「票読み」を体験してみませんか
開票所での報道各社の基本的な票読みは、以上の通りです。
開票所での報道各社の動きは、徹底した事前準備に基づいています。もし身近で選挙があれば、ぜひ開票所に出かけてみてください。
双眼鏡を手に記者に混じって票を読んでみると、自分のまちの未来が決まる瞬間の熱量を肌で感じ、行政への関心がより深まるはずです。
