科学・量子力学を楽しく学ぶには 『多世界解釈』が人生の後悔を癒す理由 もしあの時…?
科学はいろいろな世界を想像させてくれる。SFよりずっとリアル。科学を学ぶことの楽しみは、理論や数式から未知の世界を構築できること。観測や実験で証明できていない仮説であっても将来、科学技術の発展で確認できるかもしれない。
その一つに量子力学の「他世界解釈」があります。違った生き方を選択した自分がどこかにいるという世界です。そう考えると、量子力学がぐっと身近になり、私たちの生き方にも影響を与えそうです。具体的に見ていきましょう。
後悔と「もしも」の世界
あのとき、○○していたらよかったのに。もし、トライしていたら違う人生や世界が広がっていたのに。皆さんは過去のことで後悔したことはありませんか。
量子力学では、別の選択をしていたら違う世界になっていたという考えがあります。これが「他世界解釈」です。
量子力学の「多世界解釈」とは
アメリカの物理学者エベレット3世が大学院時代に書いた博士論文にある「パラレルワールド」がもとになっています。彼は量子力学による世界の分岐は、連続的に自動的におこるものであり、実験や観測をしたとしても、それ以前に存在した並行世界はその後も存在し続けると考えます。
並行世界では、量子の配置、その集まりでできている人間の行動、天体までもが違っていると考えられます。あなたが選択した瞬間に別の世界に次々と分岐し、歴史の違う世界が並行して存在しているということです。
多世界解釈と映画の世界
多世界解釈は、アメリカの映画「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」(エブエブ)や「スパイダーマン」などでもストーリーの重要な構成要素として使われています。
多世界解釈では、あなたは映画のように無限の別の世界で生きているのです。互いに干渉することはできません。
エブエブは、世界が並行して存在するマルチバースに飲み込まれてしまった女性を描いています。それぞれの世界に存在する別の自分の記憶や特殊能力を手に入れた彼女は、すべての世界に迫る重大な危機に立ち向かいます。
この映画はアカデミー賞作品賞に輝き、女優ミッシェル・ヨーは主演女優賞を獲得しました。

人生の「もしも」とどう向き合うか
あのとき大学受験で失敗しなければ。就職試験で変なことを言わなかったら。お酒を飲まなかったら。あの人に告白していたら…。
皆さんの人生はうまくいっているでしょうか。もしそうでなくても、別の世界に自分が存在し、活躍しているとしたらどこか救われる気がしまませんか。不思議な愛おしさを覚えませんか。
量子力学は日常生活とかけ離れていると思われがちですが、ときに励ましてくれるそんな存在なのかもしれません。数式的にも矛盾しないとされています。
そんな世界を想像してみるだけで、物語が始まる気がします。
追記・二重スリット実験
量子力学では有名な「二重スリット実験」というものがあります。
2つの上下のスリット(細い穴)の開いた板を用意して、板の穴の後ろには電子が来たらその場所が光るスクリーンを置きます。
1つの穴に向けて電子を撃っていくと、1つの電子が上の穴と下の穴を同時に通り、板の後ろでもう一度出合って干渉している結果が出ます。
上と下の穴を通った世界が「並行世界」として同時に存在し、スクリーン上の縞模様はその並行世界が互いに干渉することで現れると解釈されます。ただし、人が直接、観測するとその痕跡は消えてしまいます。
別の有力な考えの一つ「コペンハーゲン解釈」では、観測した瞬間に実験で確認された並行宇宙は消え去ってしまうとしています。理由は、はっきりしません。
「多世界解釈」では、観測したとしてもそれ以前に存在した並行世界はその後も存在し続けると考えます。実験後はただ、異なる世界が感知しづらくなるとしています。



