リーマン物語⑮
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リーマン物語
6月末で退任することになった社会部出身の編集担当役員は退任直前、本社報道フロアを訪れた。わきには付き添いの社員がいた。マイクを渡されると、彼はで話し始めた。社内放送にも流れた。しばらく言葉が出ない。ようやく絞り出すように「皆さんと一緒に仕事ができたことは幸せだった。ほんとうにありがとう」と言うと泣いてしまった。30年以上、この会社にいるがこんなシーンは見たことがない。上に物をはっきり言うタイプ。報道の在り方をだれよりも真摯に考える性格。それがいつからかマイナスに働いたのか。衆院選や参院選ではデスクや支局長、部長らを集めた編集会議で先頭に立って指示を出していた。それが7月の参院選前にいなくなるなんておかしい気がした。上層部にうとまれて退任に追い込まれ、悔しさで涙を流したのか。真相はわからない。私には社が変わってしまった象徴的な出来事に見えた。彼はあいさつの後、社会部と整理部の机の間で希望する社員たちと記念撮影。最後は拍手で通路へと送られた。記念撮影には新しい編集局長のもとで幹部になった人たちの姿はなかったように思う。