NHK番組「3カ月でマスターするアインシュタイン」を見て感じた物足りなさと学びのヒント
3カ月で駆け抜けた物理学入門
NHKで7月から9月にかけて放送された「3カ月でマスターするアインシュタイン」を全編見ました。古典物理学から最新の素粒子物理学までを幅広く紹介する内容で、大学教授がタレントを生徒役にして解説するわかりやすい構成でした。
ただし、量子力学や超弦理論のくだりは駆け足で、肝心な部分がうやむやになった印象。高校時代に現代史を飛ばされたときのように「ここが一番知りたいのに…」という感覚が残りました。
印象に残った二つのテーマ
それでも、最終回では興味深いテーマが出てきました。
- ブラックホールの蒸発
事象の地平面付近で粒子と反粒子が発生し、一方がブラックホールに吸い込まれ、もう一方が外に逃げる。結果としてブラックホールの質量が減り、やがて蒸発してしまうという仮説です。事象の地平面は、光がその領域を超えて外に出ることができない境界線です。理論上、ブラックホールの本体は自身の強力な重力に耐えられず、一点にまで圧縮されてしまいます。この点を特異点と言います。 - マルチバース(多宇宙)
親宇宙から泡のように子宇宙が次々と生まれる。私たちの宇宙もその一つにすぎないという考え方です。
番組ではフライパンや縄など身近な道具を使って表現しており、初めて触れる人にもイメージしやすい工夫がされていました。
触れられなかった「ホログラフィー原理」
ただ、一番期待していた「ホログラフィー原理」については紹介されませんでした。これは、反ド・ジッター時空上の量子重力理論(超弦理論)が、一つ次元の低い空間上の重力を含まない理論と等価だとするもの。マルダセナの論文は高エネルギー物理学で最も引用されているほど重要です。
最新の研究では、京都大学の高柳匡教授が「量子もつれが集まることで時空が生まれる」という理論を提唱しています。YouTube講演も見ましたが、正直「さっぱりわかりません」でした。
番組のうたい文句が「人類が到達した最高点の教養に触れてみませんか?」ですが、最高点の教養の手前で終わった感じです。
この辺りをNHKが扱ってくれたら――と残念に思いました。
学びにどうつなげるか
この番組を見て気づいたのは、「テレビで扱えるのはどうしても入門編まで」ということです。深く理解したいなら、自分で文献を読む、大学や公開講座で学ぶ、講演会に参加するといった一歩踏み込んだ学びが必要です。
私自身は進学準備の中で、物理学の最前線に触れる環境に飛び込もうとしています。今後は「自分が理解できなかった部分を、どうすれば一般の人に伝えられるか」をテーマに、ブログでも発信していきたいと思います。

