大学で宇宙を学ぶには「壁」がある どうすれば学べるか|社会人が理学部に通ってわかった現実
社会人として、宇宙を学びたいと大学に聴講生として通ったら、満足がいく知識を身につけることはできるのか。答えは、そうとも限らない。記者経験のある私は、サイエンスコミュニケーターを目指し、秋から国立大学理学部2科目を聴講しています。しかし、聴講生は学部科目しか受講できず、知りたいことはもっと先。研究室を探しても理系は細分化されていて、どこでどんな研究をしているのか分かりにくい。アプローチもしにくい。どうすれば、目的にたどりつけるのか。大学に通いながら試みをお伝えしていきます。
はじめに:社会人でも宇宙を学べると思っていた
国立大学理学部に通えば、宇宙の謎がすぐに学べると思っていました。それは甘い考えと知らされました。
聴講生として入学して1カ月。やりたいことにたどり着けないもどかしさが募っています。
理学部の講義は“宇宙”とはほど遠かった
文系出身の自分にとって、理学部の学びのスタイルは戸惑いの連続です。超ひも理論、ダークエネルギー、ホログラフィー原理、ブラックホール——知りたいのはそうした理論物理の最前線でした。
しかし、社会人が聴講できるのは学部生向けの講座のみ。基礎的な力学や熱力学、電磁気学が中心で、興味のある講義はすべて大学院対象でした。
教授にも聞けず、事務室をたらい回しに
実際に履修できたのは「量子力学」と「一般相対論」。講義のあと教授に質問しましたが、専門が違うため明確な答えは得られません。やりたい分野へ進むには、どう動けばいいのか。物理学部の事務室や関連の研究所を訪ねても、はっきりとした案内はなく、いくつもの部署をたらい回しにされました。
大学院生でも答えられない専門の壁
学部生向けの相談カフェにも参加しましたが、対応してくれた大学院生も学んでいる分野が違うため答えられません。どこに行けば全体像が見えるのか、霧の中にいるようでした。
大学ホームページを隅々まで調べても、体系的な情報は見つかりません。ただ、30近い研究室があることだけは分かりました。いずれもアルファベットかギリシャ文字の教室ばかり。それぞれが何を研究しているのか、外からでは見えません。
調べてみると内容は「素粒子論」「クォーク・ハドロン理論」「一般相対論・量子宇宙論」「プラズマ理論」「宇宙論」「理論宇宙物理学」「銀河進化学」「複雑性科学理論」「基本粒子」「基本粒子」「高エネルギー素粒子物理学」「素粒子物性」「宇宙イメージング」「天体物理学」「宇宙物理学(赤外線)」「宇宙物理学(エックス線、重力波)」「複雑性科学実験」などでした。
素粒子宇宙起源研究所で見た「熱気」
そんな中、直感的に惹かれたのが「素粒子宇宙起源研究所」でした。思い切って建物を訪ねてみると、想像以上の世界が広がっていました。廊下の両側にある部屋の壁には、びっしりと数式や図形がペンで書かれていました。

ホワイトボードにも数式が並び、院生や教員が黒板を前に熱く議論していました。NHKの宇宙番組で見る海外名門大研究室の風景そのものでした。
偶然出会った准教授との対話が転機に
2日目、エレベーターホールで偶然出会った准教授が「こんにちは」と声をかけてくれました。
私が新聞社でデスクをしていること、科学記事を深めたいこと、サイエンスコミュニケーターを目指していることを話すと、「質問や希望をメールで送ってください」と応じてくれたのです。
その准教授こそ、研究所内のサイエンスコミュニケーター・チームの一員でした。まさに私が目指すところです。
ようやく道が見えてきた気がしました。大学に通うだけでは、やりたい学問には届かない。動き続け、つながりを探し、自ら扉を開かなければならない。そう痛感した1カ月でした。



