【社会人の大学聴講記】宇宙の真理に届かない?理学部の厚い壁と「最新理論」への遠い道のり

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「もう一度、大学で宇宙を学びたい」

そう願う社会人は少なくありません。しかし、いざ国立大学理学部の門を叩いてみると、そこには想像以上に厚い「専門の壁」がありました。

記者経験のある私は、サイエンスコミュニケーターを目指し、秋から国立大学理学部2科目を聴講しています。

知りたいのは宇宙の起源や最新の理論物理学。けれど、目の前の講義は基礎の力学。理想と現実のギャップに悩み、事務室をたらい回しにされながらも、自ら研究室の扉を叩いた「大人の学び直し」のリアルを綴ります。

社会人でも宇宙を学べると思っていた

国立大学理学部に通えば、宇宙の謎がすぐに学べると思っていました。それは甘い考えと知らされました。

聴講生として入学して3カ月。やりたいことにたどり着けないもどかしさが募っています。

理学部の講義は“宇宙”とはほど遠かった

文系出身の自分にとって、理学部の学びのスタイルは戸惑いの連続。

超ひも理論、ダークエネルギー、ホログラフィー原理、ブラックホール——知りたいのはそうした理論物理の最前線でした。

しかし、社会人が聴講できるのは学部生向けの講座のみ。基礎的な力学や熱力学、電磁気学が中心で、興味のある講義はすべて大学院対象でした。

教授にも聞けず、事務室をたらい回しに

実際に履修できたのは「量子力学」と「一般相対論」。講義のあと教授に質問しましたが、専門が違うため明確な答えは得られません。

やりたい分野への道筋を求めて物理学部の事務室や研究所を訪ね歩いた際、私はいくつもの部署を「たらい回し」にされる経験をしました。しかし、これは単なる対応の不備というより、現代の理学研究が抱える**「極端な専門細分化(タコツボ化)」という構造的問題**の現れではないか、と記者の目には映りました。

大学院生でも答えられない専門の壁

学部生向けの相談カフェにも参加しましたが、対応してくれた大学院生も学んでいる分野が違うため答えられません。どこに行けば全体像が見えるのか、霧の中にいるようでした。

大学ホームページを隅々まで調べても、体系的な情報は見つかりません。ただ、30近い研究室があることだけは分かりました。いずれもアルファベットかギリシャ文字の教室ばかり。それぞれが何を研究しているのか、外からでは見えません。

調べてみると内容は「素粒子論」「クォーク・ハドロン理論」「一般相対論・量子宇宙論」「プラズマ理論」「宇宙論」「理論宇宙物理学」「銀河進化学」「複雑性科学理論」「基本粒子」「基本粒子」「高エネルギー素粒子物理学」「素粒子物性」「宇宙イメージング」「天体物理学」「宇宙物理学(赤外線)」「宇宙物理学(エックス線、重力波)」「複雑性科学実験」などでした。

研究室の扉に並ぶ専門用語の羅列は、外の世界からは一つの「物理学」に見えても、内部では隣の部屋が何を研究しているかさえ詳細には把握しきれないほど、知が細分化されていることを物語っています。

本来、宇宙の起源という壮大なテーマに挑む学問でありながら、その窓口は驚くほど狭く、閉鎖的です。大学院生や教授であっても、専門外の問いには「管轄外」という見えない壁を作ってしまう。この知の高度な断片化こそが、学び直しを志す社会人が最初にぶつかる、大学という「知の巨大迷宮」の正体なのです。

社会人がこの壁を突破するには、大学の公式な案内という「表の階段」を上がるだけでは不十分です。各研究室が発信する断片的な情報を自ら繋ぎ合わせ、タコツボの隙間を縫うようにして、自らの手で「知の地図」を再構築していく覚悟が求められているのだと痛感しました。

素粒子宇宙起源研究所で見た「熱気」

そんな中、直感的に惹かれたのが「素粒子宇宙起源研究所」でした。思い切って建物を訪ねてみると、想像以上の世界が広がっていました。廊下の両側にある部屋の壁には、びっしりと数式や図形がペンで書かれていました。

ホワイトボードにも数式が並び、院生や教員が黒板を前に熱く議論していました。NHKの宇宙番組で見る海外名門大研究室の風景そのものでした。

しかし、ここも部外者立ち入り禁止とされ、学部生でも自由に出入りできません。

やりたい学問にたどり着けない

大学に通うだけでは、やりたい学問にはたどり着けない。

私が知りたかったのは、「量子エンタングルメント(量子もつれ)から時空が創発する」という最新の理論。多くの研究現場は実験と観測が中心であり、理論物理の最前線に触れるのは容易ではありませんでした。

大学という箱に通うだけでは答えに辿り着けない。

書店で見つけた『ジー先生の場の量子論』を開き、AIを家庭教師に、自ら扉を開き続ける。この「もがき」こそが、サイエンスコミュニケーターへの真の第一歩なのだと感じています。

ジー先生の場の量子論では、経路積分やファインマン・ダイアグラム、粒子と反粒子の存在、励起する物質など大学4年から大学院生が習う内容がずらりわかりやすく解説されていた。

動画でもわかりやすく概要を説明しているのも見つけた。ジェミニでもそれなりに解説してくれる。

独学で学び、他大学の研究者や学会の勉強会にも参加しようと思う。新しい学びを目指して進んでいきたい。

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シュレディンガー
報道記者
主要マスコミに勤務。記者、デスクとして東京、大阪、地方での取材経験あり。最近はサイエンスコミュニケーター目指して宇宙物理や量子力学を学んでいる。
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