社会人が理学部で学ぶ魅力とは|独学では得られない“知の現場”のリアル

fourier1

社会人として理学部に入学した理由

社会人になってから大学理学部で学ぶことのメリットを、実体験をもとにお話ししたいと思います。私はサイエンスコミュニケーターを目指して、10月から国立大学理学部物理学科に入学し、聴講生として2科目を受講しています。

大学には先端の知が集まり、他大学の研究者による講演も頻繁に開かれています。学生が望めば、それらを活用してより理解を深めることができ、独学に比べてはるかに多くの学びが得られます。追求したい学問がある人には、大学での入学を強くおすすめします。

講義スタイルに驚き ― ICT化された学びの現場

私が受講したのは「量子力学Ⅰ」と「一般相対論」。
量子力学は2年次の講義で、初回は200人の学生でびっしり。一般相対論は3年次の講義で100人ほどが受講していました。学生たちは真剣そのもの。私語や居眠りはほとんどなく、集中して講義を聞いています。

学生はパソコンやタブレットを持ち込み、講義ノートは学内専用サイトで事前に配布されます。教授の説明を聞きながら、学生は電子ペンでタブレットに書き込み、効率よく学んでいました。紙のノートを使っていた私の大学時代とはまったく違う光景です。

特に素晴らしいのは、疑問点をオンラインで質問できる点。教授が1日〜2日以内に返信してくれます。希望すれば研究室面談も可能で、講義後にも気軽に質問できました。独学では得られない貴重な体験です。

大学院生との対話で見えた研究の最前線

毎週水曜夕方には、大学院生が学部生の相談に乗る時間があります。初回に専用教室を訪ねたところ、物性物理を研究する院生2人が対応してくれました

私は新聞記者であり、サイエンスコミュニケーターを目指していることを伝え、さまざまな質問をしました。

彼らは大学で「常温での超電導実現」に挑戦していました。もし成功すればエネルギー効率が飛躍的に上がるそうです。


量子コンピューター研究については「誤り訂正に多大なコストがかかり、現実的な課題が多すぎる。今やこの分野はレッドオーシャンといえます」と現場ならではの意見も聞けました。

第一線の研究者の生の声を聞くのは、とても刺激的でした。

トヨタ自動車など大手企業に就職できるレベルなのに、なぜそちらを選ばないかも聞いてみました。すると2人は「企業へ行くよりも大学で研究しているほうが面白い」と口をそろえました。

お金よりも、発見につながる研究の方が彼らを魅了するのでしょう。

なぜ、物性物理を目指したのか、将来の目標や量子力学を学ぶことの難しさ、市民と最新研究のギャップなどもうかがい、2人の研究への情熱のすごさが伝わってきてとても貴重な時間でした。

また、いつでも来てくださいとおっしゃっていただいたのは、とてもうれしかったです。

研究室・学会・講演会が日常にある環

理学部の建物には、宇宙線・素粒子・ブラックホール・ニュートリノなど、多様な研究室が並び、最新研究の紹介パネルが掲示されています。見て回るだけでもワクワクします。

その一つの教室に2人の院生がいたので、飛び入りで彼らに質問したりしました。事情を伝えると、こちらも質問に応じてくれました。

また、構内には学会や講演会の案内ポスターも多数掲示されています。希望すれば自由に参加でき、常に新しい知識に触れられる環境です。

まとめ:大学でしか得られない「知の縦のライン」

大学には、学部生・院生・研究者・教員がつながる「知の縦のライン」があります。文系とは異なる理系の厚みを実感しました。

理系を学びたい人にとって、大学は知的刺激の宝庫です。
講義、教授や院生との対話、研究室訪問、他大学の研究講演――。独学や市民講座では得られない、リアルな学問の空気を感じることができます。

合わせて読みたい
自分に向いている仕事とは?〜好きなことが見つからない若者へのヒント〜
自分に向いている仕事とは?〜好きなことが見つからない若者へのヒント〜
ABOUT ME
シュレディンガー
シュレディンガー
報道記者
マスコミに勤務。記者として東京、大阪での取材経験あり。最近はサイエンスコミュニケーター目指して宇宙物理や量子力学を学んでいる。
記事URLをコピーしました