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リーマン物語⑭

fourier1

C情報

会社内だけで月一回発行されている社外秘の冊子「C(イニシャル)情報」がある。地方における他社の動きや政治経済についてまとめたもの。実質は管内の他社の悪口や地方議員の悪態などをつづった下世話な内容ばかり。これらを支局記者や支局長が取材の合間に調べて本社の編集担当者に送っている。「○○社の記者は、支局長とそりが合わない。精神的に病んでしまった」「○○議員と○○議員は不倫関係にある」「○○社の記者は市長に嫌われている」「○○社の記者はクラブの懇親会で大失態をした」「○○記者は、きちんと確認もせずに間違った記事を書いて大恥をかいた」など。他社の人事情報も詳細に掲載している。

地方記者らは毎度、ネタを集めなければいけない。上司からは再三、催促されめんどくさい。各社の記者や市広報関係者にお願いして毎月、しのいでいる。この慣習は私が知っているだけで数十年は続いている。同僚から「時間の無駄」「くだらないのでやめよう」との切実な声が上がる。私も上司に同じことを訴えたが、変わらなかった。役員たちが読むのを楽しみにしていて、やめられないとのことだった。社内専用ポータルの電子版にも掲載されるようになった。

最近、他社の記者から「自分のことが掲載されている」と抗議を受けた。掲載内容はその記者をめぐる個人的なもので、私の会社でC情報が社員に回覧されていることに不快感を示した。「お前の会社の記者のことも広くばらすぞ」とすごい剣幕で私の会社に押しかけてきた。漏洩したきっかけは私の会社の地方記者。彼が問題の記者に直接、C情報を見せたという。社の情報管理の甘さもさることながら、人権意識の低さや時代遅れの体質が世間に知られることになった。その後、C情報は廃刊した。

ABOUT ME
シュレディンガー
シュレディンガー
報道記者
マスコミに勤務。記者として東京、大阪での取材経験あり。最近はサイエンスコミュニケーター目指して宇宙物理や量子力学を学んでいる。
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